米価暴落
消費者にとって喜んでいられない
食の安全・安心を脅かす
TPP参加・市場任せの米農政
5キロ1580円、特売で20%引きなどとお米の特売価格が量販店のチラシに躍っています。4月から消費税が上がったにもかかわらず、税込みで増税前より安くなっているのです。生産者は今年の秋の新米価格に神経をとがらせています。
消費者にとっても喜んでばかりはいられません。すでに米価は生産費を大幅に割り込んでいて、“作り手がいなくなる事態”になりかねないのです。主食の米、日本の農業の土台ともいうべき稲作が重大な危機を迎えているのです。
過剰が表面化し下落に転じる
東日本大震災による流通の混乱をきっかけに、上昇した米価は昨年春には米の過剰が表面化して下落に転じ、今や歯止めがかからない状況です。
急激な米価の上昇に消費が追いつかず、中でも外食や中食(弁当やおにぎり等)が1食(1個)あたりの量目を減らしたため、年間で40万トンもの需要が減少したとされています。
しかし、米価が下がったいまも、量目は減ったままとされ、米の過剰在庫は解消されていません。
40万トンの過剰は国民の消費量(800万トン)のわずか5%にすぎません。この間、米のわずかな不足や過剰で米価は大きく乱高下しています。その真の原因は、政府が米の需給と価格の安定に責任を持たず、市場任せに放置してきたことにあります。
その上、TPP参加を前提にした「農政改革」で、4年後には、主食の計画的な生産から国が一切手を引く方針を打ち出したのです。先行きの不透明さは市場の過剰感にいっそう拍車をかけているのです。
生産費の半値で出荷することに
こうした中で今年の米価で農家手取りがどれほど確保できるかが懸念されています。米業者の間では、市場価格は1俵(60キロ)1万円前後との声も聞かれます。そうなると流通経費を差し引いた生産者の手取りは8000円前後になってしまいます。米の生産コストは政府の調査でも全国平均で1万6356円(直近5年の平均)です。おおよそその半値の8000円で米を出荷することになりかねないのです。
政府は今年から主食の米に対する助成金(10アールあたり1万5000円)を半分に減らし、2017年で打ち切ることにしました。米価が下がった際の補てん金も今年から廃止しました。米価暴落で真っ先に打撃を受けるのは担い手といわれる大規模農家や集落営農組織です。政府は「8割の農地を担い手に集約する」として、「農地バンク」を設立しましたが、大規模農家の間で「真っ先に農地を預けるのはわれわれだ」との声が上がっているほどです。
“安いものにはワケがある”
“価格がすべて”の激しい販売競争のもとで、昨年の米不足時には、西友ストアなどが中国産米などを「国産より1割安い」などと大々的に売り出し、牛丼の松屋はオーストラリア産米を、吉野家はアメリカ産米を使用しました。過剰が明らかになった今、中国産米などを混ぜて、“国産のコシヒカリ”などと称して販売する悪質な業者の偽装表示が相次いで発覚しています。大手量販店や系列のドラッグストアなどで販売されていたのです。まさに“安いものにはワケがある”です。
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業者の不正取引を報道する各紙 |
TPP参加や市場任せの農政によって、消費者にとっても国産米の安定的な供給や食の安全・安心が大きく脅かされることになるのです。
家族農業つぶす改革反対の声を
この秋、農民は“米作って飯食えねえ”をスローガンに政府に対して、「米の需給と価格の安定に責任を果たせ」「TPP交渉から撤退せよ」「家族農業をつぶす『農政改革』の中止」などを要求して運動を展開します。消費者・国民を含めた共同の運動に広げることが求められています。
(新聞「農民」2014.7.28付)
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