規制改革会議の答申をみて
誰のための「農政改革」か
新潟県十日町市農業委員会会長
阿部 三代継さん
公選制廃止、首長の選任
建議・意見具申を除外
規制改革会議の答申を読み、腹の底から沸き上がる怒りを抑えることができませんでした。
昨年来、現場無視の議論を重ねる同会議に対して、実例をあげながら実態に即した議論へ軌道修正するように求めた農業委員会系統組織の声に耳を貸さず、今回の答申となりました。
農業委員会の公選制を廃止し、市町村長の選任とし、法に基づく大切な業務の一つである行政に対しての建議、諮問、意見具申を除外するとなっています。このことによって選挙で選ばれる行政委員会はすべて姿を消すことになります。
農業委員が、60年あまり地域に寄り添い、農業者の代表として市町村長に対して対等に発言し、活動してきた実績を評価しようとしない暴論です。
選挙になる例が少ないからという理由で即選挙廃止とはいかにも短絡で、「ここ何年も洪水がないから堤防の必要はない」との論理に等しいものです。それよりも無選挙の原因に思いをめぐらせたことがあるのかと問いたい。多岐複雑な業務内容、法的業務の責任の重さ、日当にも及ばない報酬額などボランティア精神に支えられている状態では、選挙になるはずはありません。
私が懸念するのは、選任一元化になり、建議や意見具申を法的業務から除外すれば、首長との仲良しクラブ的な農業委員会に成り果ててしまう恐れがあることです。
今回の農政改革の真の目的は、日本農業を成長産業にする、農家所得を倍増させ、農村地域を活性化させるものであったはずです。それが本末転倒も甚だしく、農業委員会を骨抜きにする結果となりました。
どこが本来の目的である農業振興と結びつくのか、規制改革会議のメンバーに改めて問いたい。
(新聞「農民」2014.6.30付)
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