農業「規制改革」許さず
地域の力と国民の共同で農業・農協・農地守ろう財界と安倍政権は、歴代自民党政権が農業の危機的状態を作ったという真実を引っくり返し、原因は農協と農業委員会、企業の農地所有を禁じてきた農地法にある、だから、いまこそ「規制改革」が必要だと言い張っています。6月13日に政府の規制改革会議が出した「答申」は、TPPに参加し、「世界で最も企業が活躍しやすい日本」をつくる成長戦略の一環として、日本農業と国民の食を支えてきた家族農業を否定し、営利企業に農業と農地を解禁すること、その障害になっている農協や農業委員会の解体に等しい改革を要求しました。 自民党の「抵抗」で「玉虫色」になった部分もありますが、農業とはまったく無縁の財界人を座長にすえ、農業関係者を無視して作られた内容は、史上最悪のひどいものです。
農協系統組織の解体ねらう農協については(1)全国・都道府県の農協中央会を廃止する、(2)全農(全国農業協同組合連合会)は株式会社化する、(3)単位農協に信用(金融)・共済事業の中止を迫り、総合農協という日本の農協運動の大事な特徴を壊す、(4)准組合員の農協利用(年金受け取りやガソリンスタンド利用など)を制限し、農協の社会インフラの役割を否定するなど、農協系統組織の解体を要求しています。詳しくは表をご覧ください。また、このやり方が協同組合という性格そのものを乱暴に否定するものであること、全農の株式会社化が何をもたらすかについては、4〜5面の太田原高昭・北大名誉教授へのインタビューをご覧ください。 中央会の廃止については「自律的な新たな制度に移行する」というあいまいな表現になりました。農水省の記者クラブに属するマスコミのほとんどは、これを自民党と全中の合作による「骨抜き」と非難しています。しかし、日本農業新聞だけは、これを「廃止と読めなくはない」玉虫色の表現だという規制改革会議委員の発言を報道し、来年早々の「法改正の場であらためて廃止が迫られる恐れもある」と指摘しています。 単協の事業利益の構成割合を見ると、信用・共済事業が3分の2を占める一方、営農指導事業は赤字です。協同組合として事業を「総合」的に行っているからこそ、営農指導が行えるのです。答申は「単協の活性化、健全化のため」とごまかしていますが、信用・共済事業の取り上げは不健全化、倒産に直結します。 全農の株式会社化を含め、農協事業をねらい撃ちにして、大企業に新たなもうけ口を提供するものにほかなりません。
大企業の農地つまみ食いをフリーにすでに、誰でも農地リースが可能になっていますが、これをさらに進めて、誰でも農地を所有できるようにする規制改革を2段階で進めることを要求しています。第1段階は、農地を所有できる農業生産法人の役員について、半分以上が農民でなければならないという要件を、「1人以上が農作業に従事」すればよいことにするもの。役員が5人とすれば、4人は東京の大企業本社で利益が上がるのを待っていればよいことになります。法人に対する出資も、農外資本25%未満から50%未満に緩和します。 これは、営利企業による農地の利用や所有を大幅に認め、大企業などが農業生産法人として農地、農業に進出する条件を格段に広げるものです。そして、来年の国会に農地法「改正」案を提出することを求めています。 第2段階は、5年後までに農業生産法人の「壁」そのものを取り払い、大企業が農地をつまみ食いし、土地投機や産廃処理場作りができるようにせよというもの。 背景にあるのは、憲法・平和など「戦後レジームの脱却」をめざす安倍政権の超右翼路線。稲田規制改革担当大臣が「農地法は賞味期限切れ。農地法自体の抜本的改革を提言したい」と言い、林農水大臣が「農地制度の抜本改正により、戦後の農地改革による負の遺産を払拭する」と応ずるところに、危ない本質があらわれています。
農家を排除し、農業委員会を骨抜きに農業委員会の見直しでは、農業委員会の公選制を廃止し、市町村長の任命制にすること、行政庁への意見・建議を「余計な仕事」だとして業務から除外することを要求しています。これは農家の参加を排除し、「農民の議会」であり、独立の行政委員会である農業委員会を市町村長の下請け機関に変質させるもの。委員数を現在の半分にすること、事務局を複数の市町村の共同事務局にすること、都道府県農業会議・全国農業会議所の廃止や別法人への改組などの骨抜き策を来年の国会までに実施することを求めています。 今年は「国際家族農業年」です。世界の流れに逆行し、家族農業と協同組合をつぶす農業「規制改革」をやめさせ、地域の力と国民の共同で、農業・農協・農地を守りましょう。
地域農業と雇用を守れ!
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[2014年6月]
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