「国際生物多様性の日」記念シンポ
大丈夫?食べ物と生物多様性
稲も野菜(ナス)も遺伝子組み換え?
食農市民ネット
「国際生物多様性の日(5月22日)」を記念して、「食と農から生物多様性を考える市民ネットワーク(食農市民ネット)」が5月24日、東京都内でシンポジウム「大丈夫?食べものと生物多様性」を開催しました。このシンポジウムは、今年10月に韓国のピョンチャンで開かれる国連生物多様性条約第12回締約国会議(COP12)に向けて開かれたものです。
シンポでは「アジアにおける遺伝子組み換え作物の現状と課題」をテーマに、フィリピンのNGO「第3世界ネットワーク」のリー・アルウェロさんと、バングラデシュのNGO「SHISUK」のサキウル・モルシェドさんを招き、討論を深めました。
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アルウェロさん(中央)とモルシェドさん(左端)、天笠さん(右端) |
フィリピン
有機農業条例でGM規制
アルウェロさんは、多国籍アグリビジネス「シンジェンタ」社がフィリピン稲研究所と共同で開発した「ゴールデンライス」について報告。ゴールデンライスは、ビタミンAのもととなるベータカロチンを多く含むという遺伝子組み換え(GM)イネで、シンジェンタは「栄養状態を改善する」と言って売り込んでいます。
しかしビタミンAの必要摂取量を満たすには1日9キロものゴールデンライスを食べなければならず、実際にはまったく普及していないことから、現在では「ゴールデンライス2」と呼ばれる、さらにベータカロチンが強化されたGMイネが開発され、商業栽培の認可が申請されています。
一方、フィリピンでは、2010年に中央政府で有機農業法が承認され、西ネグロス、東ネグロスの両州、ミンダナオ島のダバオ市など州や地方自治体で、有機農業条例の一環としてGM作物の持ち込みや栽培を規制する条例を制定する動きが広がっていることを報告しました。
バングラデシュ
Bt(殺虫性)ナスで害虫被害増加
モルシェドさんは、モンサント社が開発したBtナスについて報告しました。Btナスは、ナスノメイガという害虫がナスを食べると死ぬという、殺虫性をもつ遺伝子組み換え作物です。バングラデシュはナスの原産地で、現在248もの品種があり、日常的に食べられているもっとも身近な野菜の一つです。
モルシェドさんらNGOは、栽培を承認しないよう、幾多にもわたって裁判に訴え、反対運動を展開していますが、今年1月、20軒の農民にBtナスの苗が無料で配られ、栽培が始まりました。ところが、ナスには37種もの害虫がおり、こうしたBtナスの畑ではナスノメイガ以外の別の害虫被害がより深刻に出ていることを、メディアが報道しています。
日本からも食農市民ネット共同代表の天笠啓祐さんが、現状を報告しました。スギ花粉症治療稲などの開発が進められている一方で、これまで開発されてきた数多くのGMイネが、市民の反対運動の力でいずれも商業栽培には至っておらず、品種開発としては失敗していることを指摘し、「私たちの運動に確信を持って、より多くの人に伝えていきましょう」と呼びかけました。
(新聞「農民」2014.6.9付)
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