「農民」記事データベース20140602-1119-08

被災地・相馬市岩子(福島)で3年ぶり作付け

「田んぼアート」
田植えワークショップ


舞台美術家・シェフ・建築家…多彩な参加者
“浜通り再建のため力になりたい”

 東日本大震災と福島原発事故から3年。津波で用水路が壊れ、塩害を受けた福島県相馬市岩子(いわのこ)地区の田んぼが今年、3年ぶりに作付けされることになり、その再開を「田んぼアート」で彩ろうというプロジェクトが始まりました。

 取り組んでいるのは、「そうまいわのこ田んぼアート実行委員会」。震災直後から浜通りで支援活動を続けているNPO「有形デザイン機構」と、浜通り農民連と浜通り農産物供給センター、有形デザイン機構の三者で、震災復興の拠点にと立ち上げたNPO法人「野馬土」などが実行委員会のメンバーです。

 5月17日には、田植えワークショップが行われ、首都圏や兵庫県などから50人(生産者含む)が集いました。なにしろユニークなのが、その参加者の顔ぶれ。建築家、ランドスケープデザイナー、舞台美術家、ダンサー、パフォーマー、俳優、フランス料理のシェフ、留学生、大学教授と学生たちなどなど、単なる「消費者」という範疇(はんちゅう)には収まりきらない多彩な人々が、初めての田植えに汗を流しました。

 図柄は「つなぎ馬」

 すでに田んぼには、ビニールテープで田んぼアートの図柄「つなぎ馬」が描かれ、準備も万端。浜通り地方北部は、相馬野馬追(のまおい)(武者の乗った騎馬が疾駆する祭り、神事)が有名ですが、「つなぎ馬」は地元の武将、相馬氏が使った家紋です。暴れ馬をくいにつなぎ止める力強さを表しており、復興に立ち向かう浜通りの人々の力強い意志をこめて、この「つなぎ馬」が田んぼアートの図柄に選ばれました。

 田植えの先生は、ランドスケープデザイナーの三濃輪朋史さん。田んぼの主は遠藤友幸さんです。松川浦のノリ漁師でもある遠藤さんは、浜通り農民連漁民部の代表も務めています。「後ろ向きに下がりながら、植えていくんだぞー」という遠藤さんのかけ声に続いて、はだしになった参加者が田んぼの中へ。「キャー、気持ちいいー!」などと歓声を上げながら、図柄に沿って6種類の苗を植えました。

 田植えの後には、お待ちかねのバーベキュー。岩子地区の農民連会員も加わって、楽しく交流しました。

画像
田植えの終わった田んぼを背に、みんなでパチリ

 舞台関係の仲間と東京から参加した、舞台美術家の杉山至さんは、「これから物見やぐらも作って、楽しいイベントもやりたいと仲間たちで話しています。農村歌舞伎や田植え歌などもあるように、もともと稲作は文化や芸能のゆりかご。芸能を生み出した地域の魅力や文化をもう一度、地方から、ここ浜通りから発信していければ」と言います。

 岩子地区の農民連会員で漁民でもある岡本泰伸さんは、「3年ぶりの田植えはやっぱりたいへんです。でも県外の人が、とくに若い人が、こうして浜通りの再生に力になりたいと来てくれる。どんな苦労にもかえがたいです」と、万感の思いを込めて話してくれました。

(新聞「農民」2014.6.2付)
ライン

2014年6月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2014, 農民運動全国連合会