ファストフード抗議アクション
時給1500円にしてよ!!
世界35カ国以上いっせい大アピール
まともに働き、暮らせる賃金に
「ファストフードの時給、1500円にしてよ!!」をスローガンに、ファストフードや外食産業の賃金引き上げを求める抗議行動「ファストフード世界同時アクション」が5月15日、世界36カ国、93都市(アメリカ国内では158都市)でいっせいに取り組まれました。
日本では、全労連が全国27都市で抗議行動を展開。東京では、首都圏青年ユニオンや全労連のほか、さまざまな労働組合、市民で、同アクション・東京実行委員会が結成され、当日は渋谷センター街を「時給1500円にしてよ!!」のプラカードを手に、楽器を演奏しながら練り歩いてアピールしました。
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東京・渋谷のセンター街で行われたアピール行動 |
以前、ファストフードでアルバイトしていたという女性は、「せめて生活できる時給がほしい。時給が低いのは、働き手として尊重されていないと感じる。こんな社会を変えたいと参加しました」と、言います。
こんな低賃金は社会的に不公正
今回の世界同時アクションは、SEIU(全米サービス業従業員組合)が世界の労働組合を訪れ、行動参加を呼びかけたことから始まりました。アメリカでは1年ほど前から、「時給15ドル以上」を掲げたファストフード労働者たちのストライキが行われ、その広がりは全米100都市以上に及んでいます。
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アイルランド・ダブリンでのアピール行動 |
一方、オバマ政権も、連邦最低賃金を現在の7・25ドルから10・10ドルへと引き上げることを打ち出し、コネティカット州やメリーランド州で州の最低賃金が10・10ドルに引き上げられるなど、いま全米で最低賃金の引き上げが焦眉の問題となって広がっています。
アメリカでも、ファストフード労働者の賃金は最低水準。「アメリカでは、NAFTA(北米自由貿易協定)の発効後、国内の製造業が空洞化し、ごく普通の市民が普通に働いて、暮らしていける、まともな雇用がなくなっています。みんなが貧乏になるなかで、売れるのは安いファストフードばかり。お店も、雇用も、ファストフードばかりという現状があるのです。日本もそうなりつつありますが…」と、背景を説明するのは首都圏青年ユニオン非正規労働センターの河添誠さん。
SEIUのストライキや抗議行動には、ファストフード労働者だけでなく、市民や地域団体、宗教者も支援しています。今回のアクションのもう一つの世界共通スローガンは『ファストフード労働者の権利を尊重し、公正な賃金を!』。「ファストフードは低賃金労働でもうけている多国籍資本の一つの象徴です。今回の世界同時アクションが画期的だったのは、ファストフードに限らず、『こんな低賃金は社会的に公正でない』ということを一致点に、人間としての尊厳を求めて、労働運動の枠を超えて社会運動として広がったということなのです」と、河添さんは言います。
2人に1人が非正規労働者
ひるがえって、日本のファストフードの時給は――全都道府県の求人情報を調べた実行委員会は、「最低賃金に張り付くように低い水準になっている」と指摘しています。一番高い東京の店舗でも1000円で、フルタイムで働いても年収は186万円。スローガンの1500円になっても、年収にしたら279万円にしかなりません。
首都圏青年ユニオン書記長の神部(じんぶ)紅(あかい)さんは、「若者や女性の2人に1人が非正規労働という現状のなかで、いま、ファストフードをはじめ外食チェーン店では、本当に社員がいません。どこのチェーン店でも、店長(社員)は1人で10店舗くらい担当しており、これまで正社員が担ってきた中核的な仕事を、アルバイトが低賃金のまま、過重労働をして担うようになっています」と実態を告発します。
こうした労働条件のあまりの劣悪さの結果、いま牛丼チェーン「すき家」や居酒屋チェーン「ワタミ」では辞めるアルバイトが相次ぎ、人手不足のため休業や営業時間を短縮する店舗まで生まれています。「でも何もしないのでは低賃金は解決しない。なぜなら250円の牛丼を売る『すき家』のようなチェーン店は、低賃金でこそ成り立つ商売だからです。やはり政治の力で全国一律最低賃金を引き上げ、低賃金で人を使い捨てにする経済システムそのものを変える必要があるのです」と、神部さんは言います。
農産物も賃金も買いたたく
河添さんも「ファストフードの食べ物は、不当に安い」と指摘します。
「ファストフードは、食品を作るプロセスで農産物を買いたたくことで農民を搾取し、加工、流通、販売のプロセスでも労働者を低賃金で搾取し、その搾取が商品価格の安さになっているわけです。農産物価格にしても、賃金にしても、『人間の労働を買いたたく』ということを許す政治や経済のあり方を変える必要があります。最低賃金の引き上げは、みんながまともに働いて、まともなものを食べて、普通の生活ができる、そういう社会に底上げする運動なのです」
(新聞「農民」2014.6.2付)
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