「農民」記事データベース20140526-1118-08

農民連の活動を視察して

豪州・農民運動支援団体「レシプロシティー」代表
スコット・ジョンさんに聞く

 オーストラリアの農民運動を支援する団体・「レシプロシティー」の代表スコット・ジョンさん(ブリスベーン在住)が4月21日から5月11日まで来日し、東京、千葉、静岡、長野の農民連の活動を視察しました。オーストラリアで自由貿易が小農民に与えた影響や、農民運動の現状、視察の感想を聞きました。


農民連、農家の取り組みに感銘
始まったばかり豪州の農民運動

 私たちはオーストラリア国内の別の組織や、国際農民組織ビア・カンペシーナと協力して、小農民の運動の組織化を支援しています。

 FTA締結で国内農業が一変

画像  オーストラリアは広大な国土に2300万人が住んでいます。沿岸から200キロの範囲でほとんどの食料生産が行われていて、内陸になるほどやせた土地になっていきます。食料自給率は93%で国内生産の40%が国内に供給されています。

 オーストラリアには15万人の農民がいます。そのうち50ヘクタール以下の小農民は約5万人で、穀物、野菜、畜産などを組み合わせて生産しています。アメリカとのFTAによってオーストラリアの農業は一変しました。アメリカの大企業が参入し企業経営に変わり、小農民は土地を手放しています。また市場は多国籍資本による2つのスーパーが支配し、小規模商店は全て姿を消しました。この大手スーパーは農家に価格、栽培方法、見た目まで指定して生産させます。そのため、小規模の自然農法などは市場から締め出され、1カ月で300人が農業から離れるという統計もあります。大手スーパーは食料供給システムの全てを支配しようとしているのです。

 FTA後の豪州よく見て考えて

 多国籍企業の資本の力は強大です。中山間地を含めた日本の農地すべてが多国籍資本による流通企業やアグリビジネスの手に落ちる危険性は十分にあります。日本はFTA後のオーストラリアがどうなったか、よく考えてほしいと思います。

 オーストラリアの小農民は組織的な運動ができていません。「大規模農民の邪魔をするな」という圧力にさらされ続け、政府の政策によって競争を強いられて、互いに協力することができていませんでした。

 しかし希望も出てきています。小規模農家は産直に取り組み始め、スーパーを通さず直接地域の人に農産物を届け始めています。地域のコミュニティーを作って信頼関係をもとに生産を継続していくことが重要だと考えています。

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お茶摘み交流会で語るスコットさん(左)=静岡県藤枝市

 5年前にやっと運動立ち上げた

 5年前、オーストラリアにビア・カンペシーナのみなさんが来たことで運動の種がまかれました。私たちはそれ以来「フードコネクト」という組織とともに活動を進めてきました。今年2月からビア・カンペシーナの支援のもとで「家族農業ユナイテッドネットワーク」を立ち上げました。まだすごく小さい組織ですが、将来的にオーストラリア全体の運動になることを願っています。

 もう一つは「オーストラリア食糧主権連盟(アライアンス)」という組織とともに、食糧主権、健康な地元の食品に関する世論喚起を行ってきました。政府へのロビー活動を重視して活動しており、今年、農民を含む支部を開設しました。

 豪日両農民の交流・発展ぜひ

 日本の各地や農民連食品分析センターを回って、農民連の農家の取り組みに強い感銘を受けました。農家自身がいかにして運動を組織していくか、とても重要なことを学べました。各地で、農家のリーダーたちが地域で密接な関係を築いていました。

 こうした日本の農民運動は世界の農民組織が学ぶべきものをたくさん持っています。

 オーストラリアの農民運動はまだ始まったばかりです。各国で、すでに活動している組織との交流は非常に重要になっています。今度はオーストラリアの農民を日本に連れてきたいですし、日本のみなさんにも来ていただいて、交流を発展させたいと考えています。

(新聞「農民」2014.5.26付)
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2014年5月

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