「農民」記事データベース20140519-1117-01

418年間の伝統もつ

とろろ汁屋「丁子屋」

14代目の柴山広行さん(35)
静岡県農民連の会員です

画像  江戸時代以前から続く伝統を守り、生産者とともに歩んでいる料理屋さんがあります。東海道五十三次の一つ、丸子宿(静岡市)にある、とろろ汁屋「丁子屋」(ちょうじや)です。歌川広重の浮世絵に描かれている店とも言われています。
 その丁子屋の14代目の柴山広行さん(35)は、静岡県農民連の会員。自然薯(じねんじょ)の生産農家で藤枝市農民組合の森下剛紀さん(牧之原市)から農民連食品分析センターを紹介されたことがきっかけでした。大学卒業後、和太鼓の演奏で各地を回った経験を生かしながら、農家の思いを丸ごと消費者に届けようと奮闘しています。柴山さんに農へのこだわり、思いをききました。


こだわりは
農家の努力・思いを伝えたい

自然薯の山土の香り
自家製の無添加みそ
古民家を移築し店舗

 地元の静岡で栽培した自然薯

 私たち丁子屋は418年間とろろ汁を提供してきました。一般的にとろろ汁の製法でこれという定義はないのですが、食材に関しては丁子屋では自然薯だけを使用してきました。特に香りにはこだわりを持っています。

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江戸時代の古民家を利用した丁子屋=静岡市駿河区

 40年ほど前には近隣の農家が山から掘り出してきたものを買い取っていましたが、そのことで「丁子屋は山荒らしだ」といわれてしまいました。ちょうどそのころ、山口県で栽培方法が確立されて、自然薯栽培が全国に広がりました。それを知った祖父が、その先生のかばん持ちをしながら県内の農家に栽培方法の指導に回りました。それ以降私たちは、地元の静岡で栽培した山の土の香りがする自然薯をこだわって使ってきました。

 農家のところへ行き勉強して

 私は丁子屋に入社して生産農家の森下さんたちと話をするようになってから、生産することに関して何も知らないと感じました。農家のみなさんのところに見学に行き、勉強させてもらうと、今度はわかったことをお客様に知ってもらいたくなりました。「畑からすり鉢まで」、とろろ汁ができるまでの過程すべてと、その中にある農家の努力、思いをお客様に提供できれば、自分が感じたようにもっとおいしくとろろ汁を味わってもらえるという考えでした。

 その一環として店の中に栽培農家の写真を展示しました。また、自分で栽培を始めた畑での自然薯の掘り起こし体験や、糀(こうじ)屋さんとともにみそ作り体験の交流会などを始めました。自然薯が育って収穫するところまでをお客様に見てもらうことができて、栽培をやってきてよかったと思っています。

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栽培した自然薯を手にする柴山さん

 お客様と生産者両方あっての店

 お客様に提供するものだからこそ、品質には気を使います。安心して食べられるものをと、お店で提供するみそも無添加の自家製です。農民連食品分析センターの残留農薬検査で、安心が確認できて、自信を持って提供できるようになりました。

 「振り返れば未来が見える」。祖父はよく言っています。江戸時代から使っていたかやぶきの古民家を移築して店舗に使用し、広重の浮世絵に合わせて梅とあんずの木を店の前に植えたのも祖父です。なにが大切なことなのか、次の時代に何を残したいのかをしっかり見極めてこだわりを大切にしていきたいです。

 お客様があっての店ですが、生産者があっての店でもあります。料理屋だからこそできるアプローチで生産者と消費者の間をつないでおもしろいことをやって、地域が盛り上がってお互い高め合っていければいいと思います。とろろ汁も県内では一般的な家庭料理なので、各家庭にすり鉢が一つ必ずあるようになればいいですね。

 柴山さんは自然薯の収穫やとろろ汁作りなどで消費者に向かって発信をしています。これからも森下さんをはじめとする生産者と手をとりあって、こだわりのとろろ汁を通じた生産者と消費者の交流に期待です。

(新聞「農民」2014.5.19付)
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2014年5月

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