「農民」記事データベース20140505-1116-05

TPP反対

各国での運動広げ
国際連帯の強化を

ビア・カンペシーナ
TPP国際農民戦略会議


農民連 日本農業に破滅的影響
台湾  中国産品の流入を懸念
韓国  “遺伝子組み換え”も有機?

 農民連の代表7人と全国食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)の坂口正明事務局長の日本代表団8人は4月16日から19日まで韓国・ソウルを訪問し、TPP・FTA対応汎国民対策委員会が主催するTPP国際フォーラムと、国際的農民組織ビア・カンペシーナが主催するTPP国際農民戦略会議に参加しました。各国農業へのTPPによる影響とそれに対する取り組みについての意見交換を行うとともに、TPPに反対する農民の運動と国際的な連帯の必要性について議論しました。

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TPP国際農民戦略会議に出席する日本代表団(左の7人)

 日本代表団が訪韓中、韓国では旅客船の沈没事故があり、フォーラムや会議の冒頭、犠牲者への哀悼を示し、行方不明者の救出を願う黙とうを捧げました。

 食料自給率低下する

 ビア・カンペシーナTPP国際農民戦略会議は17、18両日に行われ、日本のほか、韓国、台湾の農民組織とその連帯組織が参加して、議論しました。

 韓国全国農民会総聯盟(KPL)のキム・ヨンホ議長が「韓国政府は市場開放政策を進めてきたが、農業生産の減少と食料自給率の低下を招いた。TPPに加入すれば、状況はもっと悪くなる。この国際会議の成果をいかし運動を発展させたい」とあいさつしました。

 ビア・カンペシーナ東南・東アジア代表のユン・グンスンさん(韓国女性農民会=KWPA=)が「各国の農民がWTO(世界貿易機関)やFTA(自由貿易協定)の脅威にさらされており、運動をより強く進める必要がある。新自由主義に対するたたかいへの連帯を強固にするスタートにしたい」と述べました。

 TPPの農業への影響について韓国・ハンシン大学のイ・ヘヨン(李海栄)教授(国際関係論)が講演。TPPの徹底した秘密性と、アメリカの要求を丸のみしなければならない危険性を韓米FTAと比較しながら暴露し、「より自由化が進み、農民や中小企業はさらに苦しくなる」と指摘しました。

 日本の自動車企業と競合する現代自動車がTPPに反対していることを紹介し、「推進姿勢のIT産業と反対の自動車産業の間で、朴槿恵(パク・クネ)大統領は揺れている」と述べ、反対運動の連携強化を呼びかけました。

 家族農業が地球養う

 各国農業へのTPPの影響とこれに対する取り組みについて、参加国の代表が発言。農民連の真嶋良孝副会長は、TPPによる農産物への影響試算などを示し、「TPPは日本の農業に破滅的影響を及ぼす」と述べるとともに、農業「構造改革」政策で、家族農業を否定し、企業が支配する農業モデルを推進している日本政府を批判しました。

 また、アジア・モンスーン気候を生かした水田の生産力を生かし、農地1ヘクタールあたりの人口扶養力が日本は約9人、韓国は約8人と世界の中でも高いことを紹介し、「小規模・家族農業こそが地球を養い、地球温暖化の解決に貢献する」と語りました。

 台湾の代表(台湾農村陣線)は、台湾政府が国民に何も知らせないままTPP参加に前向きな姿勢であることを批判。中国との貿易協定で、中国から安い値段で質の悪いものが大量に流入し、台湾の農産物が大打撃を受けることに懸念を表明しました。

 さらに、自由経済パイロット地域を設け、そこでは関税なしで入ってきた農産物を加工し、輸出すれば「メード・イン・台湾」と表記できることを示し、「パイロット地域はTPPのための入場券だ」と述べました。

 農民の役割見直そう

 ユン・グンスンさんが韓国を代表して報告し、1980年代に軍事独裁政権が牛肉の輸入を認めたときから農民の運動も高揚し、韓国・チリFTA(2004年発効)でブドウ農家が半減し、韓米FTA(12年発効)で畜産に悪影響がでていることを告発。交渉中の中国とのFTAでも農業に破滅的な影響がでることを指摘しました。

 また、TPPでアメリカの有機農産物認証制度を韓国でも受け入れるよう迫られ、認証制度には遺伝子組み換え農産物も含まれていることから、韓国国内で反発が広がっていることを紹介し、「TPPは、食の安全と主権の問題であることを国民に提起していきたい」と発言しました。

 参加者は、国ごとに分かれて討論した後、再び全体で議論し、ビア・カンペシーナとしての提案をまとめました。

 提案は、食料を提供し、伝統文化を守る農民の役割を改めて見直し、TPPに反対していくことを表明。他分野の専門家との連携や各国間の情報の共有、政治家への働きかけと農村での連帯の強化を方針とすることを確認しました。

(新聞「農民」2014.5.5付)
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2014年5月

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