「農民」記事データベース20140428-1115-01

助け合いで集落の農業維持したい

矢道営農組合代表・西濃農民組合会員
船田義博さんを訪ねて(岐阜・大垣市)


 今は麦がじゅうたんのように広がる岐阜県大垣市矢道町。この地に矢道営農組合が79戸で組織されています。代表は西濃農民組合会員の船田義博さん(59)。

後継者を育てて生産力・販路広げ

 怒りとあきらめが入り混じり重い空気

 営農組合の4月末の総会に向けた準備会合で、米の直接支払交付金の半減や生産調整の廃止など「農政改革」が話題になりました。

 「農業続けていてもいいことないなぁ、いじめられてるようだ」「かってに米作って売れってか、どうしようもないなぁ」と怒りとともにあきらめが入り混じる重い空気が漂います。ほとんどが60〜70歳の高齢世代、病気などで耕作ができなくなると、引き受け手がいない悪循環が地域を覆っています。

 船田さんが地域を何とかしなくては、と思ったのは日本のWTO(世界貿易機関)への加盟強行と前後した時期(1995年ごろ)でした。減反を拒否しても自分の分を集落の誰かが肩代わりさせられ、対立があおられていました。「外米を輸入して減反は許せない、助け合いで何とか集落を維持しなくては」と決意し、以来38町歩の耕作地で麦作とのブロックローテーションを中心に、最近はブロッコリーの作付けも始めるなど、組合運営を担ってきました。

 “異色”の後継者も野菜直売が励みに

 船田さんには早稲田大学第一文学部中退という“異色”の後継者、真洋(まひろ)さん(32)がいます。

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右から船田義博さん、息子の真洋さん、妻の伸子さん

 「畑違いですよね」と聞くと「夏・冬の休みなどは畑仕事を手伝っていましたから、農業を継がなくては、という気負いは全くありませんでした。ほんとに自然の成り行きです。栽培方法や技術に関しても見よう見まね、耳学問がほとんどです」と。お邪魔したときも、畑で直売所に出す野菜の生育チェックをしていました。「最近出てないね」と道端で知らない人に突然声をかけられ、びっくりすることがあるといいます。「ぼくの名前で買っていただけるお客さんがいるんだな、と思うと励みになりますね」とうれしそうです。

農民連も育てよう

 「改良ハツシモ」で準産直米も再開へ

 船田さんにはJA直売所のほかに、愛知県名古屋市東部にある農民連の生産者と消費者が共同運営する「いのこしの樹(き)産直ひろば」や「西山虹の市場」などへの出荷があります。火曜と金曜の週2回の開店ですが、開店前から買い物かごを持った人が行列をつくり、10時から2時間で生鮮品はほぼ完売します。「野菜と米で月平均30万円くらいかな。待ってるお客さんがいるというのは損得ぬきだねぇ」と笑います。

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いのこしの樹産直ひろばの店内。山盛りだったワゴンは10分ほどでご覧のとおり=3月11日

 また、「ハツシモ」というおくての米を準産直米で出荷していましたが、2年連続でいもち病のため、途切れていました。改良種ができたので再び準産直米への出荷を検討しています。会社組織で20町歩を作付けする会員さんを訪ね、お盆過ぎに米卸を訪問しようと相談しています。

 岐阜県農民連は長く役員さん宅を事務所にしていましたが、県労連が入る建物の一画に県連事務所を確保し、専従事務局員も配置できることになりました。「会員も読者も広げないとね」と地域農業を守り後継者を育て、生産力と販路の拡大を通して農民連も育てようと奮闘中です。

(農民連ふるさとネットワーク 森谷精)

(新聞「農民」2014.4.28付)
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2014年4月

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