静岡県女性部が福島ツアー
やっぱり原発はダメ
再稼働なんて許さない
「やっぱり原発はだめだねえ」「再稼働なんて絶対許しちゃいけないね」――活断層の真上に建ち、「世界一危険な原子力発電所」とも言われる浜岡原発を抱える静岡県。福島第一原発の事故では、300キロ以上離れた静岡県でも特産のお茶が出荷停止になるなどの被害を受け、今なおその風評被害は続いています。
「浜岡原発がもし事故を起こしたらどうなるのか。福島の被害実態を、一度、自分たちの目で確かめてこよう」と、福島への被災地ツアーを静岡県農民連女性部が企画。3月27〜29日、女性部のお母さんたちのほか、男性会員なども含めて総勢13人が被災地を訪れ、交流しました。
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伊達市霊山町の太陽光発電所を見学する一行。左から4人目が大橋さん |
壮絶な体験談は話すも聞くも涙
福島市内の仮設住宅の集会所では、浪江町から避難してきた女性たちが出迎えてくれました。「わが家は帰還困難区域内にあり、戻ることも自由にできない。昨年、兄と母が亡くなったがお墓にも入れられず、遺骨になっても避難している」という女性の話や、津島地区の診療所の元看護師さんの「原発事故直後は(同地区に)放射性物質が大量に飛散したことも知らされず、避難してくる患者さんの治療に明け暮れた」という壮絶な体験談に、聞いている人も、話している人も涙なしではいられませんでした。
希望失わずにたたかう農民連
2日目は、伊達市霊山町にある福島県農民連の太陽光発電所へ。用地を提供した福島県北農民連会長の大橋芳啓さんの、「原発事故で福島の農業は本当に大きな打撃を受けた。だからこそ、大企業のメガソーラーなどではなく、私たち農民連の手で、本当に地域のためになる形で、自然エネルギーを実現したかった」という話に、全員が大きくうなづきながら聞き入っていました。
ツアーバスは相馬市にある浜通り農民連の直売所「野馬土」に到着。浜通り農産物供給センター代表理事の三浦広志さんの案内で、福島第一原発が5キロ先に見える浪江町請戸地区まで近づくことができました。原発に近づくほどに荒廃が進む光景に、一行は言葉を失ってしまいます。
賠償基準の線引きや水稲の作付け状況、浜通り農民連の運動など説明しながら、「農民連があって本当によかった。農民連があるから、僕らもここでがんばっていける」と希望を失うことなく力強く語る三浦さんの言葉に、一行から熱い連帯の拍手が送られました。
静岡でも福島の運動と連帯して
2日目の夜は南相馬市の農家民宿に分宿です。森キヨ子さんの農家民宿「森のふるさと」には、藤枝市でお茶を栽培する杵塚かづ江さん、敏明さん夫婦と浜北市のミカン農家の佐藤妙子さんが宿泊。南相馬市小高区の農民連女性部会員で、今は鹿島区などの仮設住宅で暮らしている根本幸子さん、宮川フジ子さんも駆けつけて、心づくしの料理を囲んで、夜遅くまで交流が続きました。
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仮設住宅で体験談を聞く参加者 |
和牛の繁殖農家で「農業と牛が大好きだったのに、原発事故で牛を残して避難しなければならなかった。牛はその後殺処分された」と話してくれた宮川さん。長い間、夫婦で安全なものづくりにこだわり、原発事故後も試験田としてごく一部の米作りを続けている根本さん――故郷もものづくりも奪われた2人の無念さ、くやしさ、怒りは、同じ農家同士だからこそ静岡の3人にも胸に迫ってくるものがあります。
それぞれの家族や後継者のことにも話は発展し、高齢者は元の場所に戻りたい人が多い一方で、もう戻れないという若い世代が増えてきている被災地の現状も浮き彫りになっていました。
原発を推進する安倍政権に怒り
帰りのバス車中では、被害者の生活再建も完全賠償も後まわしにしたまま、再び原発を推進しようとする安倍政権に怒りが噴出。一行はあらためて「こんな事故は二度と起こしてはいけない」と決意しあっていました。
静岡県農民連女性部会員でイチジク農家の矢入博美さんは、福島ツアーの感想を、「簡単に言葉にならないほど衝撃を受けました。実際に福島まで来て、本当によかったです。浜岡原発も東海大地震が起きたら、たいへんなことになります。原発再稼働は絶対許してはいけないなと思いました」と話しました。
(新聞「農民」2014.4.14付)
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