「農民」記事データベース20140331-1111-01

消費税は“営農破壊税”

税率アップを中止せよ


 4月1日から消費税率がいまの5%から8%に上がります。農産物価格を自分で決められない農家にとっては、増税分の価格転嫁など土台無理な話です。震災や大雪被害などの自然災害のほか、肥料・飼料、燃油代、資材の高騰、米価下落が農家に負担を強いるなか、赤字でものしかかる消費税はまさに営農破壊税です。消費税増税は許せません。

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「消費税増税は中止せよ」と開かれた3・13重税反対統一行動(東京・官邸前)

 復興特別所得税が昨年から始まり25年間で総額8兆円の増税となります。消費税増税と社会保障の負担増と給付減を合わせれば、国民は10兆円以上の大負担となります。

 一方で、大企業には復興特別法人税の1年前倒しの廃止で8000億円の減税や不要・不急の大型公共事業に大盤振る舞い、さらに輸出戻し税で輸出大企業はぼろもうけなど至れり尽くせりです。

 安倍内閣は来年10月からの税率10%へのアップをねらっています。「消費税のさらなる増税はやめよ」の声をさらに大きくする必要があります。

 増税を目前に控えて、農家、直売所、米屋はどうみているのか。関係者に聞きました。

消費減に追い打ちをかける増税

 株式会社シモダ(下田米店)代表取締役の下田晃さん(東京都昭島市)

 公共料金や飲食料品などが軒並み値上げするなか、消費税の増税によって、家計支出の厳しくなったお客さんの買い控えが心配です。ましていま、米の消費が下がっているときに、消費減に追い打ちをかけるようなものです。

 私も加入している米屋さんのグループ「西東京米研」では、増税前に玄米を購入してもらって、期間を決めて保管しながら、増税後も小分けにしてお客さんに届けるという工夫をしています。

 仲間の米屋さんの話では、飲食店に業務用で出している米の3%値上げを飲食店が認めてくれず、売価そのものを少し下げて、3%アップ分を埋め合わせし、今までと同額で米を提供しているそうです。

 今後は価格だけでなく、品質で勝負しないと厳しくなります。米屋で買うお客さんには、きちんと説明すれば、価格を上げることに理解を示しってくれます。お客さんの顔を見て、産地のことを伝えながら対面販売で安心して買ってもらえる―。

 これは米屋にしかできないことですし、そんな関係がますます必要になってくると思います。

増税は生産意欲に水差すものだ

 養豚農家で、畜産農民全国協議会会長の森島倫生さん(静岡県浜松市)

画像  畜産農家にとって今回の消費税増税は、すでにここ数年、世界的な穀物高騰でエサ代が値上がりし、畜産農家の収入が減少しているなかで行われます。これまでもエサ代の高騰分がそのまま畜産物価格の値上がりへとスライドすることはなく、畜産農家は身銭を切って経営を続けている状況でしたが、今回の増税も価格に転嫁できる見通しはほとんどありません。

 また、消費税はエサ代だけでなくすべての設備投資にかかってきますので、増税で必要な投資ができなくなり、国産の畜産物の品質向上が阻害されるということも重要な点です。飼料米や食物残さを利用したエコフィードなど、各地で「よりよいものを作りたい」という生産者の模索がされていますが、増税がこうした意欲に水を差すものになってはならないと思います。

 私たち生産者は「よいものをつくりたい」という思いで、日々、農業と向き合っています。しかし労働者の生活も厳しさを増すなかで、消費者の動向もとても心配しています。今まで以上に、生産者と消費者がしっかりと手をつないで、消費税増税も、TPPも押し返すような運動にしていきたいと思います。

消費者の理解と信頼を得てこそ

 農事組合法人いばらき県南阿見産直センター事務局長の荻島光明さん(茨城県阿見町)

 価格への転嫁は可能とみています。阿見では組合員と話し合い、有機たい肥を共同購入して組合員全員に分配するなど、品質向上の努力を払ってきました。

 また県の特別栽培認証を取得したり、農民連食品分析センターで行った放射線検査の結果を提示したりと、消費者においしくて安全・安心な食料を作っていることを証明できる材料もそろえてきました。

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阿見産直センターの直売所(中央が荻島事務局長)

 そのおかげで、購入客には遠方から定期的に来る人が増え、贈答用も増えるなど、消費者との信頼関係ができ価格にも納得してもらうことができました。価格への理解を得て信頼関係を作ってきたからこそ、価格決定権を持って運営できています。

 しかし、鶏卵や加工品などは、増税に合わせて資材の高騰分も反映させたいのですが便乗値上げと思われる可能性があるので、生産者の方で一部負担せざるをえない状況です。

 生産者が品質向上の競争を怠らないようにして、外部機関のお墨付きなども得て消費者に価格への理解と信頼を得ることが一番大切だと感じています。

(新聞「農民」2014.3.31付)
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2014年3月

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