ビア・カンペシーナ地域会議と
女性会議
農民連副会長 真嶋 良孝
国際的農民組織ビア・カンペシーナ東南・東アジア地域会議と女性会議が2月23〜27日にタイ・バンコクで開かれました。タイ、インドネシア、ベトナム、韓国、台湾、フィリピン、東チモール、パレスチナ、日本の9カ国・11組織に加えて、ミャンマーから2組織が初めてオブザーバー参加。農民連からは私(真嶋)と高橋マス子女性部副部長、岡崎衆史国際部員が出席しました。
「従軍慰安婦」問題、TPPと
農地改革がおもな議題に
TPPで国際連帯強化を合意
23日に行われた女性会議には高橋副部長が参加しました(女性会議の詳細は次号に掲載します)。24〜25日に開かれた地域会議では、TPPと農地改革が主な議題になりました。
TPP・WTO(世界貿易機関)問題では、国際調整委員のヘンリー・サラギ氏が「昨年はWTO香港閣僚会議行動以来の運動の盛り上がりがあった。TPPに対しては、日本と韓国で運動が発展しているが、まだアジア全体の運動になっていない」と問題提起。
地域事務局から「環太平洋のTPPと環大西洋のTTIP」が妥結すれば、WTO以上に危険なものになる可能性があり、アジア・南北アメリカ・ヨーロッパで特別な取り組みが重要。ビア・カンペシーナとして共同の見解を作り、運動を呼びかけることを検討している」ことが報告されました。
農民連からは日本でのたたかいの発展と、地域会議と並行して開かれていたTPP閣僚会議が漂流を重ねている状況を報告し「われわれには、まだたたかう時間がある。国際組織であるビア・カンペシーナの力を発揮して、TPP・WTOに対するたたかいを発展させよう」と呼びかけました。
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地域会議で発言する真嶋副会長(左端) |
国際的に連帯する運動の第一歩として、4月中旬に韓国で予定されているTPP国際フォーラムを成功させること、TPPに参加を検討している台湾を含むアジア諸国でTPPの危険性に対する注意喚起を行うことを合意しました。
農地取り上げとのたたかい
地域会議と26日に開かれた公開フォーラムでは、農地改革・土地略奪問題が切迫した局面を迎えていることが熱心に討議されました。
農地改革が完了した国(日本、韓国、台湾)と、農地改革がきわめて不徹底な東南アジア。農民組織が直面している課題は異なりますが、経済のグローバル化の進行のもとで、新たな農地取り上げが進んでいることは共通しています。
たとえば台湾では、工業団地や高速道建設のために土地取り上げが強行されており、これに対抗する運動が焦眉の課題になっています。フィリピンとミャンマーでは、開発のための土地取り上げとともに、外国資本による土地略奪(ランドグラビング)が最大の問題。
タイでは、国有地である森林の入会地利用の既得権を奪い、農民の追い出しが進んでいることが北部・東北部に共通する問題であり、平原の農地改革が進んだ地域でも負債の担保に農地が取り上げられ、地主と国家への土地集中が進んでいます。
それぞれの国で、時には警察や軍と対峙(たいじ)し、ブルドーザーの前に座り込んでたたかいが行われています。
公開フォーラムでは、日本が徹底した農地改革を行ったことが東南アジアでも知られているためでしょうか、農民連に「食糧主権と社会正義のための農地改革」と題して基調報告が求められました。私は、東南アジアと比べても徹底して行われた日本の農地改革の概略を紹介するとともに、「農政改革」のなかで、なかば強制的に農地を借り上げて企業に渡す制度を作り、わずかな「手切れ金」と引き換えに農民を追い出そうとしていることを告発しました。
また、TPP参加によって日本の農地を60%もつぶすことを見込む一方で、アジアやラテンアメリカで土地略奪を行うのは、食糧主権にも社会正義にも反することを強調し、農地を守る運動を国内でも国際的にも発展させる決意を述べました。
農地を守る運動の現場で
27日にバンコクからバスで4時間走って訪れたタイ東部のサケーオ県コケドイ・コミュニティは、タイ国軍によって土地から追われた村民が荒廃した林地に移住させられてできた集落。タイの農民運動組織(AOP)に参加し、政府庁舎の前で99日間座り込んで土地の権利を確保し、農地と森林の共同管理に取り組んできました。
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コケドイ・コミュニティのカフェの前に集まった村人と地域会議参加者 |
同時に、コミュニティは、土地の公式な所有権を獲得していないため、基本的なインフラの提供を国から受ける資格を持っておらず、電気も水道も通っていません。しかし、村民は、小規模農民として幸せに生活できるコミュニティーを築こうとしています。キノコやイノシシ、野生鶏、カエルなどの森と川の恵みとキャッサバを地域のマーケットで売り、54家族が心豊かに暮らしている姿は自信に満ちあふれています。
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コケドイ・コミュニティの入り口に並ぶ市場 |
コミュニティのリーダーの一人は、2011年に開かれたTPP国際フォーラムに来日したウタイ・サアトチョップさん。思いがけない再会に固く抱き合いました。「持続可能な生産、森林保護、販売可能な産品、持続可能なエネルギー、小規模農民としての尊厳ある暮らしを持つアグロエコロジー村にすることが目標だ」。ウタイさんは、おだやかな微笑みを浮かべながら話してくれました。
(新聞「農民」2014.3.17付)
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