「農民」記事データベース20140317-1109-01

原発事故の損害賠償訴訟
なのはな生協(千葉)と東電が和解

関連/もうやめよう!TPP交渉 3・30大行動

 千葉県の「なのはな生活協同組合」(千葉市稲毛区、組合員約1万1500人)が東京電力を相手取り、2291万円の損害賠償を求めていた裁判は、千葉地裁で和解が成立しました。請求を上回る賠償金のほか、放射線測定のための人件費も認められるなど、実質的に勝訴といえる内容です。しかし、この裁判の成果は賠償額やその内容だけにとどまらない大きな意義をもっています。


請求を1千万円も上回る賠償金
営業損害も期間超える支払い
人件費含め放射能測定費認める

 食とくらしの安全にこだわり

 「生協と組合員、生産者が一体となって取り組んだ裁判でした。さまざまな交流会やイベントなど、これまで積み上げてきた組合員と生産者とのお互いの信頼関係が大きな力を発揮しました」。同生協の岩崎秀人専務理事は振り返ります。

 なのはな生協は、1974年に創立。食とくらしの安全にこだわり、国産であることを基本に、野菜の無農薬・減農薬、遺伝子組み換えやポストハーベストなどに厳しい独自基準を設けてきました。さらに、生産者を守り、食(組合員)と農(生産者)の懸け橋として、お互いが顔の見える信頼関係を重視してきました。

 創立以来、食の安全・安心を守って、築き上げてきた事業を根本から崩したのは、2011年の東日本大震災と原発事故でした。売り上げの減少と組合員の脱退を招き、なのはな生協は、東電に対し、2011年3月11日から12年3月31日までの営業損害、放射能測定費用、弁護士費用分を直接請求しました。

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報告会で裁判の意義を述べる加瀬理事長(右)=2月18日

 東電は、11年8月31日までの営業損害分の一部と放射能測定費用は認め賠償しましたが、9月1日からの請求については、「風評被害はすでに収まっている」「売れないなら仕入先(産地)を代えればよい」「放射能測定は自分たちの利益を守るためだ」などとして、賠償を一切拒否してきました。

勝利の大きな力は――
組合員と生産者の深い信頼

 生産者と組合員4人法定に立つ

 岩崎専務は、「組合員に安全で安心できる商品を届けるためには、生産者、取引先との顔の見える関係が必要です。生協は一般の小売業とは違い利益を追求しているわけではありません。東電に取引先を代えろと言われたからといって、簡単に切れるでしょうか」と強く憤ります。

 12年9月24日、震災から12年3月末までの損害額など約2290万円の完全な賠償を求めて千葉地方裁判所への提訴に踏み切りました。

 裁判は7回の口頭弁論が行われ、7回目(12年10月29日)は、なのはな生協から加瀬伸二理事長と岩崎専務理事が原告として、生産者を代表して2人、組合員を代表して2人の組合員理事が証人として法廷に立ち、尋問が行われました。

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なのはな生協(千葉市稲毛区)

 生産者代表の証人の一人、ふくしま東和有機農業研究会の佐藤佐市会長(安達地方農民連会長、二本松市)は、「十数年前に大雨被害を受けましたが、いち早くなのはな生協さんが駆けつけてくれて、組合員からの募金を受け取りました。元気を失っていた私たちに『来年もがんばってほしい』と声をかけてくれました」と述べ、なのはな生協への強い信頼感を証言しました。

 実質的な勝訴に生産者も喜ぶ

 なのはな生協側の訴えに、裁判官も考えを変えていき、ついに千葉地裁は、和解案を提示。その内容は、なのはな生協の請求額を約1000万円上回る3294万円を東電が支払うものでした。さらに12年3月末までの請求額に加え、米(11年9月〜12年9月)、野菜(12年9月まで)、牛肉(12年12月まで)もそれを超える期間の営業損害が認められました。放射線測定費用も人件費分151万円分の賠償が盛り込まれ、独自に検査していたことが評価されました。

 こうして2月18日に、実質的に勝訴といえる和解が成立しました。東和の佐藤さんは、「なのはな生協とは強い信頼関係で結ばれており、私たち生産者も思いを共有し、一緒にたたかってきました。このたたかいは、農民連の損害賠償請求のたたかいと同じ意義をもっています」と喜びます。

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大雪被害の状況を訴える佐藤佐市さん(2月19日、加瀬理事長撮影)

 原発なくす運動これから正念場

 その後も、なのはな生協と生産者との絆はさらに強くなっています。2月14、15の両日に関東甲信を中心に襲った大雪で福島・東和地区も大きな被害を受けました。加瀬理事長はさっそく被災地にかけつけ、佐藤さんらを激励しました。なのはな生協では、組合員に「生産者の皆さん、頑張って!」と呼びかける応援メッセージと支援カンパを募っています。

 加瀬理事長は、今回の裁判の意義について、「たたかいはこれで終わりではありません。引き続き、福島と連帯して支援を続けていきたいと思います。とくに原発の再稼働を許さず、原発をなくす運動はこれからが正念場です。生産者、組合員とともに運動していきたい」と語っています。


もうやめよう!TPP交渉
3・30大行動
日  時 3月30日(日)
集  会 東京・日比谷野外音楽堂
     (午後1時開会)
銀座デモ 午後2時半出発〜4時終了予定
主  催 「もうやめよう!TPP交渉
      3・30大行動」
連 絡 先 国民の食糧と健康を守る運動
     全国連絡会(全国食健連)
       TEL03(3372)6112、
       FAX03(3370)8329

(新聞「農民」2014.3.17付)
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2014年3月

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