豪雪被害
農民連・笹渡事務局長ら現地入り
農民激励
2月15〜16日の大雪による被害は各地に甚大な被害をもたらし、農業被害額は、埼玉県で229億円(21日まで)、山梨県で71億円(24日まで)、群馬県で248億円(24日まで)にのぼります。農民連は19日、「豪雪被害対策本部」(本部長・白石淳一会長)を設置し、各地の農民連組織も、会員を救援・激励し、被害状況の確認に全力をあげました。農民連本部は22、23の両日、被災各地に入り、実態調査を行い、被災会員を激励しました。
あわやハウスの下敷きに
群 馬
農民連本部の笹渡義夫事務局長は、群馬県農民連の目黒奈美子事務局長とともに群馬県内を視察し、被災した農家を激励しました。
まずは西毛農民連副会長・木村君江さん(高崎市)のガラスハウスを視察。7連棟のハウス700坪の屋根のガラスが200枚以上割れました。中のトマトも冷気にさらされ、葉がバリバリになっていました。木村さんは「32年間、トマトを作っていてこんなことは初めて。直したくても修理できる業者がいない」と話していました。
住谷輝彦さん(85)とともに旧群馬町のハウス農家を激励。東国分町では9戸のハウス農家すべてに被害が出ました。中嶋義雄さん(76)は「あと3〜4秒ハウスから出るのが遅かったら下敷きで死んでいた。仲間が2人、下敷きで亡くなった」と話します。
下田嘉丈さん(前橋市)の養豚場では、分娩(ぶんべん)舎の屋根がつぶれました。下田和代さんは「分娩を待っている豚がたくさんいる。早く建て直さないといけない」と話します。ハウス豚舎も屋根がつぶれて自動給〓(※)ができなくなったために、毎日真っ黒になりながら餌やりをしています。
(渡邊信嗣記者)
※〓は、「餌」の異体字、ただし、「しょくへん」は、「飯」等で使う楷書体の「食」(一画少ない)。
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屋根が雪でつぶれた下田さんの分娩舎 |
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群馬農民連は2月25日に、対県要請行動を行いました。
酪農、養豚をはじめ、施設野菜、露地野菜、水田農家や花農家など、県内各地からの参加者は、甚大な被害の生々しい報告や、復旧の見通しの立たない苦しみを訴えていました。
(群馬農民連 木村一彦)
ハウス
冷気に当たり収穫ムリ
被害農家 ハウス修復に強い執念
山 梨
山梨県が20日にまとめた大雪による被害面積は173・1ヘクタールにのぼります。
佐野安男さん(甲府市)の1800平方メートルの梨ハウスは全壊。花芽が膨らみ始めた梨の樹は、雪の重みで曲がったパイプに押され、枝が折れたり幹が裂けたり、根元から倒れている木もあり、人が入れないところもあります。佐野さんは、「ここまで芽が動いている木に、ビニールを外し、冷気を当てたら今年の収穫は無理だろう」と肩を落としていました。
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ハウスが倒れ桃の木も折れました=笛吹市 |
中澤栄一郎さん(甲府市)は、「1・1ヘクタールのイチゴハウスは、朝6時には正常だったが、気温が上がってきたら一気につぶれた。やっと2花房目の収穫が始まりこれからというのに、500万円が無になった」と述べました。
普段、温泉の熱で暖房している丹沢民雄さん(笛吹市)は、「ブドウハウスでは、雪が降り始めたので、温泉とあわせ火力の強いLPガスボイラーをたいた。2回の雪で17万円以上かかったが、つぶれていればもっと大変だった」と言います。
「雪の重みでパイプが曲がってしまい、木にビニールが近いままだと高温障害になるので、3トンジャッキで下から持ち上げた」と言います。いいものを作りたいという執念を感じました。
(農民連常任委員 齋藤敏之)
埼玉産直センター
施設園芸ハウス6割以上が全壊
出荷控えた春野菜 空前の被害
“生活・施設再建に2〜3年は…”
埼 玉
埼玉産直センターがある深谷市は、特産品の深谷ネギと並んで施設園芸が盛んな地域です。ビニールハウスが全壊するなどの被害が集中しました。
センターの第1次集約では、組合員のハウス施設全体約35ヘクタールのうち、6割以上の21ヘクタールが全壊、損失金額は20億円に上ります。農産物の被害は、ハウス・露地合わせて10億円に上ります。
雪の下敷きやハウスの損壊による寒さで、ミニトマトやイチゴ、出荷を控えた春キュウリなどが壊滅となり、空前の損害となりました。
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ミニトマトを栽培していたハウスも倒壊しました=深谷市 |
再建にはまず壊れたハウスの撤去、建て直し、その間の生産者の生活支援が必要です。再起に向けて奔走するセンター専務の山口一郎さんは「1年で半分、2年で8割の建て直しを目指す。再建には2〜3年かかるのでは」と話します。
(農民連ふるさとネットワーク 笠原尚)
ハウスつぶれても 心折れず
(株)ざおうハーブ経営・平間徹也さん
(県農民連青年部長)
育苗用の33棟中19棟に被害
宮 城
宮城農民連の青年部長、平間徹也さん(32)=蔵王町=が兄と営む(株)ざおうハーブでも大雪の被害が出ました。
ざおうハーブでは、野菜や花の育苗用を含め33棟のハウスを使用していました。今回の大雪では、ビニールを切って倒壊を防ごうとしましたが、12棟が骨組みごとつぶれました。
2月14日に降り出した雪は積雪70センチにおよび、「15日朝の段階で、2棟がすでにつぶれていました」と平間さん。「朝から従業員4人と手分けをして雪おろしをしましたが、おろしたそばからハウスがつぶれていき、止めることはできませんでした」と当日の様子を話してくれました。
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ハウスの状況を説明する平間さん |
幸いけが人は出ず、ハウスの中の作物も取り出せれば出荷できる見込みで、「ビニールの張り替えで使用できるものだけでも早期に再建したい。『ハウスは折れても心は折れず』です」と意気込んでいました。
(新聞「農民」2014.3.10付)
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