TPP閣僚会合“大筋合意”先送り
交渉からの撤退を要求する
2014年2月26日
農民運動全国連合会会長 白石淳一
一、2月22日からシンガポールで行われていたTPP閣僚会合は“大筋合意”に至らず、25日、共同宣言を発表して閉幕した。
今回の閣僚会議について甘利TPP担当大臣は、「2月の閣僚会合で決めないとTPP交渉は『無期延期』になる危険性がある」と発言し、TPP参加12カ国も「最後の閣僚会合」と位置づけて交渉に臨んだ。
共同声明では、「さらなる躍進をとげた」「前回の閣僚会合で特定された着地点の大部分について合意した」と成果を誇示している。しかし、「論点が残って」おり、「(協定の実現には)相当な努力」が必要とし、「可能な限り早期に交渉を妥結することを約束」しただけで、合意の期限も、次回の会合日程さえ明示できないまま終わった。
一、閣僚会合で“大筋合意”が先送りされたことは、日本国内での「交渉から撤退せよ」「国益と5品目を守れ」の世論と運動、アメリカをはじめ、TPP交渉参加国での民衆の運動の成果であり、国際的に連帯した運動の結果である。
一、“合意”が先送りされた要因は、依然として関税撤廃や知的財産権、公有企業、環境、労働などの分野で参加国間の利害対立が解消されていないことと、アメリカが自国の利益を最大化するために身勝手な態度をとり続けたことへの各国の反発の高まりにある。
アメリカ議会に提出されているTPA法案(大統領貿易促進権限法案)が成立する見通しが立たず、反対世論に包囲されたオバマ政権は譲歩する余地がなかった。
一、安倍内閣は、今閣僚会合での“大筋合意”をめざし、オバマ政権と連携して交渉を推進してきた。このなかでアメリカの一貫した要求は、自国の利益をガードしながら、日本に対して農産品5項目を含む関税の全面撤廃と、非関税分野でのアメリカ型ルールの押しつけであった。
このことは、安倍首相が昨年2月の日米首脳会談で、オバマ大統領が日本の農産物の関税維持への配慮を約束したとしてTPP交渉に参加したことが欺まんでしかなく、「国益」を守るなら交渉から撤退する以外に道がないことを改めて浮きぼりにした。
一、TPP交渉は長期化して漂流する可能性がある。同時に、甘利大臣は閣僚会合終了後の会見で、交渉は「70〜80%のところまできている」とし、今後の日米協議とTPP交渉の推進に意欲を示した。また、この間の日米間の交渉でも、全体交渉でも、農産5項目の関税で譲歩する姿勢を再三にわたって示唆した。11月の米中間選挙の日程をにらんで4月のオバマ大統領訪日をテコに日米合意を決着させるねらいがあり、事態が急展開する危険も否定できない。
TPPの合意を許さない運動は、今が最大のヤマ場を迎えた。農民連は、TPP合意を断念させるために、3月30日に東京で予定されている「大行動」を成功させることをはじめ、TPP反対の一点での国民的共同を地域から巻き起こす決意である。
(新聞「農民」2014.3.10付)
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