埼 玉
農業再建苦しい、支援強化を
副知事に
県農民連、紙参院議員ら要請
倒壊ハウス撤去見通し立たず
収入も途絶え生活費も困窮
鉄骨の支柱も雪の重みで折れ
埼玉県では、被害が明らかになるにつれて、「個人の力だけでは経営再建できない」という声が強まっています。
埼玉県農民連は2月25日、日本共産党の紙智子参院議員とともに、とくに被害の大きかった本庄市、深谷市、熊谷市の被災農家を訪問。深谷市長、JAくまがや組合長と懇談し、岩崎康夫副知事に要請を行いました。
本庄市の高橋正巳さんの農園では、出荷の最盛期を迎えたミニトマトのハウスが倒壊。鉄骨で組まれた支柱も雪の重みで折れ曲がり、鈴なりになった赤いミニトマトをつけたまま、寒さで葉がチリチリに枯れてしまっています。「本来であれば6月いっぱいまで、あと1000万円分の収穫を見込んでいた」と、高橋さんは肩を落とします。
倒壊したハウスは建物共済に加入していましたが、共済の保険金が支払われるのは減価償却分のみで、償却期限の20年を過ぎると建設時の2割分しか支払われません。
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倒壊したハウスの前で紙議員(左から2人目)に説明する高橋さん(中央) |
さらに被害にあった農家が困っているのが、倒壊したハウスの撤去です。「折れた鉄骨やポールは危険で、素人ができる作業ではなく、業者に頼まなければならないが、その業者がいない。いても予約でいっぱい。すぐにでも再建したいのだが、壊れたハウスを撤去できないと再建もできない」と、頭を抱えるのは深谷市のハウス野菜農家の反町辰夫さんです。
反町さんは、キュウリ、トマトなどをすべてハウスで栽培してきましたが、3カ所あったハウスはすべて倒壊。「ハウス専業は、ハウスが倒壊してしまったら収入も途絶えてしまう。それでなくてもこのところの野菜価格は安く、燃油は高く、貯金などない農家も多いはずだ。生活が困窮して自殺者が出ないといいが…」と、危機感を募らせています。
被災地訪問後 深谷市長、JA組合長らと懇談
つづいて訪れた深谷市役所では、小島進市長自らが応対しました。小島市長は、ハウスが2644棟(全体の約7割)、畜舎が68棟倒壊するなど、深谷市だけでも80億円を超える「途方もない農業被害が判明している」と説明しました。参加者が、「農家も高齢化しており、これを機に離農するという声もある。支援対策はとにかくスピードが重要」と求めると、市長も「そのとおりだ。従来の概念にとらわれることなく、市でできる対策を早くやって、農家を元気づけたい」と述べ、倒壊したハウスの廃材を無料で市が引き取るなどの対策をとっていることを紹介しました。
埼玉県への要請には、埼玉県農民連と紙議員のほか、農林業と食料を守る埼玉連絡会(埼玉食健連)、日本共産党埼玉県議団などが参加。ハウスの撤去の被害農家の支援策や、県として国に激甚災害法の適用を求めることなどを要請しました。対応した岩崎副知事は、「いま一番心配なのは、農家が生産意欲をなくしてしまうこと。国にも支援策の強化を要請していきたい」と話しました。
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埼玉県の岩崎副知事(中央)に要請しました |
(新聞「農民」2014.3.10付)
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