農の会
定例研究会&総会
農業にとって自然とは?
“農”の本質とらえ直そう
新規就農者や青年農家の会員増加
「農を愛し、農を科学し、農を創(つく)る」をモットーに、農業技術の研究や交流をしている「農の会」(農民連に団体加盟)が2月1、2の両日、東京都内で定例研究会と総会を開きました。
「農の会」は、前身の「日本ミチューリン会」から合わせて創立60周年を迎えますが、近年、青年農家、とくに新規就農者の入会が相次いでいます。それは、自身も新規就農者である会長の土肥寛幸さんや、「農の会」の若い役員のつながりで、新規就農者のグループや青年農家に「農の会」の活動が少しずつ広がっているためです。今回の定例研究会にも多くの青年農家が参加し、熱気と活気にあふれた交流が行われました。
土は「作る」より「育てる」もの
今年の定例研究会は「農業にとって自然とは? 自然を活(い)かす農業経営」がテーマ。
東京農工大学名誉教授で哲学者の尾関周二さんが、「新たな文明・社会と“農”の人類史的意義」と題して、基調講演しました。尾関さんは、人間と自然とのかかわりの歴史や、人類史から見た農業の役割を豊かにひもとき、「新たなエコロジー文明を展望していくには、地域の生態系に即して食料やエネルギーを地産地消する共生型の持続社会を創出していくことが必要」と述べ、そのためには「農のあり方、復権が決定的に重要だ」と強調しました。
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尾関さんの講演を熱心に聞く参加者 |
自然農法国際研究センターの大久保慎二さんが「自然農法〜生態系をつくる農のありかた」をテーマに講演。「土」を農地の生態系の総体としてとらえ、「土は“作る”ものではなく、ゆっくり“育つ”“育てる”もの」という自然農法の「育土」という考え方を紹介し、キャベツ栽培を例に、実際の農業への応用を説明しました。
新規就農で得た経験を次の人に
事例報告では、神奈川県愛川町で新規就農して5年目を迎える千葉康伸さんが、年間で40品目を超える野菜栽培や、農園の経営状況、就農までの経緯などを報告。現在では収入も安定し、研修生も受け入れている千葉さんに、会場からは「取引先は?」などの質問が矢継ぎ早にあがりました。
千葉さんは、「農法に関してはこだわらないことがこだわりというか、これはいいよと教えてもらった方法は、なんでも一度は試してみる。今は僕なりに得られた良い方法や効率的な方法を、多くの人に伝えたいと思っている」と話しました。
また「どんな新規就農支援が必要だと思うか」という質問には、「新参者は地元とのつながりをつくることや、農業技術の向上がとても難しい。お金の支援だけでなく、こうしたことに支援してほしい」と答えていました。
活発な討論で農業技術を交流
緑肥栽培入れて土壌病害を克服
2日目の活動報告会では、会員が自らの農業やものづくりで取り組んでいる農業技術での工夫を発表し、交流しました。
長野県松本市のスイカ農家で「農の会」会長の土肥寛幸さんが、ソルゴーなどの緑肥栽培を取り入れることで、連作による土壌病害を土壌消毒することなく克服し、収量も品質も向上させた取り組みを報告しました。
また同じく松本市で野菜を栽培している石綿薫さんは、畑の土壌診断データの推移と、カボチャや秋野菜の出来具合の関係について発表。播(は)種前、栽培後と2年間にわたって継続的に土壌診断を続けたことで、カリが季節変動する(おそらく積雪の影響)ことなどが判明し、適切な肥培管理ができ、病虫害も抑えられた経験を話しました。
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昨年9月に長野県松本市で開催された「農の会」現地研究会の様子 |
総会は最後に、次期の活動方針などを採択し、閉会しました。
(新聞「農民」2014.2.24付)
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