「農民」記事データベース20140210-1104-03

米情勢と准産直米のとりくみ
農民連全国委員会での発言
(要旨)

常任委員 横山昭三さん
(ふるさとネットワーク事務局次長)


 政府の姿勢が米価下落を増幅

画像  TPP参加を前提に、流通だけでなくて生産まで市場任せにする米政策の「見直し」が唐突に進められようとしています。流通の現場では、早くもそれを先取りしたような混乱が生まれています。

 昨年春から始まった米価の下落は新米価格に直結し、さらに輪をかけた下落ぶりです。一方で、備蓄米・加工米が足りない事態にありながら、政府は何らの対策もとろうとはしません。それどころか、5年後には米づくりも完全に市場と農家任せにしようというのです。こうした政府の姿勢が米関係者の不安と混乱を助長しています。業者は買い控えと在庫減らしに走らざるをえない状況で、米の過剰感はふくらむ一方です。

 業者間の取引価格は1年前と比べて、20%前後も下落し、米農家も、在庫を抱えた米業者もたいへんな打撃となっています。

 全国農業協同組合連合会(全農)などが独自に需給調整を行う動きもありますが、これに対しても政府は傍観者的な態度に終始しています。今後、対策が実施されたとしても、その効果は限定的なものにならざるをえないと思われます。

 すでに常任委員会報告で明らかにされているように、飼料米に特化した米政策の「見直し」の破たんは明らかです。農民連の示す対案の方向にこそ、解決の道があります。

 産地は販路の確保が決定的

 また、その間、どう生産を維持し、つないでいくかということを8項目にわたって提案もなされています。こうした取り組みを進めるうえで、産地にとって販路の確保が決定的になります。

 そういうなかで、全国農業協同組合中央会(全中)や全農はどう動こうとしているのでしょうか。安倍内閣と産業競争力会議の鼻息に押されたのか批判的な対応はみられず、全中の理事会は「交付金を最大限に活用して農家所得を増やす」という方向を打ち出しました。飼料米は最大10万5000円―これが一人歩きして問題になっていますが―、全中は「産地交付金も使えば13万円だ」という具合に幻想をふりまいています。

 一方では、出来秋の一律的な概算払いを見直す、あるいは共同計算方式、委託販売方式の見直しという方針も示しています。「外食産業や流通業者などとの資本提携も含めた連携強化」の方針も打ち出しました。

 中小の米業者は、この連携強化の対象になっていないことは明らかです。今後、安定した産地の確保のため、どの業者も川上(産地)に向かわざるをえません。

 準産直米の実績経験生かすとき

 こうしたときに産地と消費者をつなぐ農民連ふるさとネットワークの役割はますます重要になります。この間、各産地とふるさとネットが共同して進めてきた準産直米の実績と経験を、激変が想定される情勢の下で大いに生かすべきときではないでしょうか。

 いま全国の米を紹介できる組織・団体で身近に相談できる、あるいは産地や生産者自身と交流できるのは農民連を除いてありません。新年のあいさつや意見交換の中でも、業者のみなさんは「今後どうなるのか」という不安の声とともに「いよいよ農民連さんの出番ですね」という声も寄せられました。岡山県では業務用向けの品種ですが、「いくらでも作ってほしい。5年先まで契約してもいい」という話も出されています。

 こうした業者の要求や販路を求める産地の要求に応えましょう。岩手県では備蓄米の販売を通して集落営農組織の加入が相次いでいます。大農家や集落営農、農協にも声をかけて取り組みを大いに広げましょう。

 主食用米に限らず、備蓄米、加工用米など多様な米にも取り組みましょう。今後、防災用の保存食は社会的な要請となります。食品加工会社や加工施設との協力関係もできつつあります。これらを全国で取り組みましょう。多様な米づくりとともに直売所や産直、業者向けの準産直など多様な販路を広げましょう。ふるさとネットも全力をあげて取り組んでいきたいと思います。

(新聞「農民」2014.2.10付)
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2014年2月

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