都市住民と福島の懸け橋に
農家民宿「ゆんた」
昨年オープンさせた
二本松市東和地区 仲里忍さん(40)
〈安達地方農民連会員〉
福島で農業と農家民宿を営みながら人生を耕す――。そんな若者たちががんばっています。福島県二本松市東和地区の仲里忍さん(40)は福島に来て5年。昨年5月には農家民宿をオープンし、地域の仲間や都市住民との交流を活発化させています。
地域の活性化に役立てれば
地元の人たちの交流の場にして
沖縄を離れて福島に来て5年
沖縄県北大東島生まれの仲里さん。6歳からは石垣島で過ごし、高校卒業後は、沖縄を離れて、関東や関西などを転々としていました。その間、無理がたたって体を壊し、それがきっかけで食べものや健康に気を使うようになり、農業への興味もわくようになったのです。
田舎での生活へのあこがれと「農業をやりたい」という強い思いを抱いて、2008年に福島に来ました。半年間の研修を終え、東和で2年間空き家になっていた今の家と畑を借りて独立し、キュウリなどをつくってきました。周りの協力を得ながらも、一からのスタート。当初は何事も無我夢中で取り組み、「大変だったけど楽しかった」と振り返ります。
その2年後に東日本大震災、原発事故を経験しますが、仲里さんは大好きな福島を離れることはありませんでした。
市町村合併を機に06年につくられた「NPO法人ゆうきの里東和ふるさとづくり協議会」の仲間たちと地域の活性化と新規就農者の受け入れに取り組んできました。
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「ゆんた」で談笑する仲里さん(左)と武藤さん |
有機の綿花で手ぬぐいづくり
昨年の農家民宿のオープンには、親しい仲間やお世話になった人もかけつけ、祝いました。民宿の名前は「ゆんた」。畑仕事などをしながら歌う沖縄の民謡がネーミングの由来です。
地域の活性化のために開いた農家民宿です。「都市に住む人たちはもちろん、地元の人も活用してほしい。これらの人たちの憩いの場、交流の場になればいいですね」
仲里さん自身、伝統文化を残そうと、地元のお年寄りを招いて竹かごづくりを習っています。また、有機栽培の綿花(コットン)を若者たちで育て、収穫した綿花で手ぬぐいをつくるオーガニック・コットンの取り組みにも力を入れています。
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農家民宿「ゆんた」 |
自然に親しんで田舎を味わって
二本松市内でナメコの生産と農家レストラン・民宿を父母と営む「協議会」の仲間、武藤洋平さん(30)は、「田舎度が高く、最も農家民宿らしい」と「ゆんた」を評価。武藤さんも原発事故では大きな被害を受け、事実上の出荷停止、客の激減を経験しました。
武藤さんは、「仲里さんは、田舎の生活へのあこがれを自分のやり方で体現しています。地域のリーダーとして、これから移り住んでくる若者の手本としてがんばってほしい」と期待を寄せます。
仲里さんは、安達地方農民連の会員です。原発事故の補償申請がきっかけで仲間に加わりました。会長の佐藤佐市さんは、「よくがんばっているなと感心します。彼の活動は今までの地域にはないもの。若い人たちとつながり、農村の大切さを伝えていくためにも、大いに期待をしていますし、一緒に運動もしていきたい」と話しています。
仲里さんは、「ぜひ東和に来て、ゆっくり豊かな自然に親しんで、田舎を味わってほしい」と言います。農業も「少量多品目の有機栽培に取り組んでいきたい。春からはスナップエンドウ、インゲン、カブなどに挑戦します」と意気込みを語りました。
(新聞「農民」2014.2.3付)
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