「農民」記事データベース20140120-1101-06

在来種の綿花いかして
女性パワーで地域おこし

福島・喜多方市
めんこいくらぶ

画像  福島県喜多方市で、在来種の綿花栽培をいかした、農家の女性たちが主人公のグリーンツーリズムが始まっています。名付けて「喜多方めんこいくらぶ」。「めん(綿)にこい(恋)する」、そして「めんこい(会津弁でかわいいという意味)」女性たちの、会津ならではの地域おこしを紹介します。


農家民宿で“農の手仕事”体験

画像  衣服としてなじみの深い「綿」。じつは「棉」という漢字もあるのをご存知でしょうか。「棉」は畑で栽培され、摘み取ったままの種子がついた綿花、「綿」は綿切り作業をして種をはずした綿花を指します。

 国内の綿花栽培の北限地、会津では、江戸時代から歴代藩主が綿花や藍の栽培を奨励し、深い雪に閉ざされる冬の間、綿花の手紡ぎ作業や機(はた)織りが農家の女性たちの大切な収入源となってきました。織り上がった会津木綿はふっくらと丈夫で、野良着などとして広く流通し、会津の地域経済を支える産品となってきました。しかし、現在では会津若松市の2社が輸入綿花を使って生産するのみとなっています。

 この会津の「棉」に思いをはせ、「綿」で町づくりをしていこうと、2012年3月に農家民宿を営む女性たちや旅館のおかみさんが集まって設立されたのが、「喜多方めんこいくらぶ」です。

 風評被害つづくでも前を向いて

 設立の背景には、福島原発事故後の深刻な風評被害がありました。喜多方市は2003年に全国で初めて「グリーンツーリズムのまち」を宣言。震災直前には年間9000人に及ぶ小中学生が喜多方市の農家民宿に泊まって、農業を体験する「農泊」を楽しんできました。

 しかし震災後は、「予約はすべてキャンセルになった」と、「めんこいくらぶ」のメンバーで、会津農民連会員の佐藤常子さんは言います。江戸時代後期に建てられたという東北地方の農家特有の「曲がり屋」を「農泊ひろ」として整備し、小中学生たちを受け入れ始めた矢先に福島原発事故が発生。以来、いまだに会津地方でも風評被害は続いています。

 「でも嘆いてばかりいられない。前に進まなきゃ。ここには豊かな自然と農業しかないけど、この会津のふるさとの良さを、体験することでまるごと伝えられるのが“農泊”のいいところ。これからも多くの人に会津の良さを味わってもらいたい」と、佐藤さんは言います。

 佐藤さんもずっと以前から綿花を作り続けてきました。「そういえば昔はどの農家にも綿切り機や機織り機があって、綿花を栽培していた。在来種は、西洋品種に比べて綿花も小さいけど、会津の風土に合ってるんだね。化学肥料や農薬を使わずとも、堆肥をやればちゃんとできるよ」と佐藤さん。「めんこいくらぶ」の綿花生産量はまだまだごくわずかで、布織物として流通させるには至っていませんが、「綿花つみや糸紡ぎが、おとなも楽しめる農の手仕事体験になれば」と、少しずつですが綿花栽培が広がっています。

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棉花から種子をはずす“綿切り”の様子。作業はあくまでごく少量ずつ。一枚の布になるまでには気の遠くなるような根気強さが必要。左端が佐藤常子さん

 農家ならではの豊かなひととき

 2013年の年末、福島県女性部の有志が、綿切とそば打ちの体験に「農泊ひろ」を訪れました。近所のそば打ち名人に教わって収穫したばかりの新そばを堪能し、縁側のひだまりで小さな綿切り機をコキコキと回しながら、会津の農家の暮らしぶりを聞く…。豊かでゆったりした時間の流れに、一同「ああ、癒されるねー」。農のいとなみに身をゆだねた、このほっこりとしたひと時こそ、農家民宿ならではの醍醐味(だいごみ)なのかもしれません。

 ▼「農泊ひろ」 住所=喜多方市高郷町塩坪字谷地田原1222、予約 TEL=0241(24)4488(喜多方市グリーンツーリズムサポートセンター、1週間前まで)1泊2食6300円(おとな)

(新聞「農民」2014.1.20付)
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2014年1月

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