「農民」記事データベース20140106-1100-01

新年あけましておめでとうございます

競争馬

夢は調教していい馬を
供給しつづけること

画像  新年を迎え、今年の干支は午(うま)です。福島県北部、桑折(こおり)町の阿武隈川近くに、競走馬を育成する「にぐらや牧場」(現在12頭飼育)があります。場長で調教を行う斎藤勘介さんは、競走馬の育成を始めて52年になります。「馬から離れられない」と言う斎藤さんは、福島県北農民連の会員でもあります。


調教歴52年「にぐらや牧場」
場長 斎藤勘介さん(66)

福島県桑折町 県北農民連の会員

 17歳の時初めて馬の競りに参加

 「馬にはいろいろな思い出がある」と感慨深く振り返ります。1963年、17歳のとき、学校から休暇をもらい、初めて馬の競りに、汽車を乗り継いで、北海道・日高まで足を運びました。まだ右も左もわからず、おとなに交じって無我夢中で競りに参加。手持ちの費用は30万円でしたが、30万6000円で競り落としました。

 親から言われて馬を運ぶ貨車の手配だけは事前に行い、その準備のよさに周りから感心されながら、意気揚々と福島に戻りました。以来、半世紀の間、毎年欠かさず日高に通っています。

 1997年には、調教した15頭のうち10頭が1着をとることに。

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「馬から離れられない」。馬を前にして斎藤さんの表情はゆるみます(にぐらや牧場)

 レース前には、たたかう顔になる

 苦労もあります。日高から帰る途中、転倒した馬を起こそうとして、馬に蹴られ、頭がい骨が陥没し、命にかかわる大けがも体験しました。

 2011年は原発事故で、馬を3カ月間、外に出せず、大きな損害を出しました。農民連の損害賠償請求行動に参加するとともに、国と東電の事故責任を明確にし、元の生活に戻れるまで賠償を求める「生業(なりわい)訴訟」にも加わります。

 牧場で馬を前にすると表情がほころぶ斎藤さん。「ここでは馬ものんびりしているけれども、これがレース前になると、表情が引き締まって、たたかう顔になるんだ」。草をやりながらいとおしそうに馬を見つめます。

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3歳馬のマルカンサクラ号が初勝利をあげたとき。左から4人目が斎藤さん=1997年、山形・上山競馬場(当時)

素質あっても努力しなければ
大成しない。人間と同じだよ

 血統がよくても調教しないと

 「ちゃんと調教すれば、それだけいい馬になる。やればやっただけの成果がでるんだ。馬はうそをつかない。自分で調教した馬が、どんな馬になるのか楽しみ」と、馬の調教にすべてをかけます。たとえ血統がよくても、よく調教しなければ、いい競走馬にはなれないといいます。「いくら素質があっても努力しなければ大成しない。人間と同じだよ」

 2005年には、生まれつき鼻が大きく曲がった馬を引き取り、競走馬として再生させようと試みたことも。

 「夢は、調教していい馬を供給し続けること。これはいつまでも変わらない」

 新年を迎えても揺るがない斎藤さんの決意です。

(新聞「農民」2014.1.6付)
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2014年1月

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