WTO閣僚会議
多国籍企業のための
合意をゴリ押し
関連/地域でさらに運動を広げTPP撤退に追い込もう
インドネシアのバリ島で開かれた世界貿易機関(WTO)第9回閣僚会議は、もともと4日間だった日程を土壇場で1日延長して12月7日まで開催し、合意を強引にまとめて閉幕しました。
ゴリ押しの揚げ句に成立した「バリ合意」は、少数の多国籍企業には利益をもたらす一方で、大多数の民衆には有害な内容となっています。
貿易円滑化の合意
WTOは2001年、ドーハ・ラウンドの開始を決めました。交渉対象は8分野。サービス、農業などのほかに、開発、貿易円滑化、知的財産、環境など多岐に及びます。貿易自由化や多国籍企業のための制度作りによる経済、農業、雇用の破壊で苦しむ南北の民衆や途上国政府が大反発し、交渉が行き詰まりました。このため、貿易円滑化、農業、開発の一部に限定し、何らかの合意を実現することで、「半死」の状態にあるWTO体制の存続・強化を目指したのがバリ合意でした。今年の9月に就任したWTOのアゼベド事務局長は早速、「ドーハ・ラウンド妥結に向けた重要な足掛かり」と発言し、包括的合意に向けた新たな動きを強めています。
バリ合意のうち、通関や国境手続きの緩和を定める貿易円滑化についての合意は、法的拘束力を持ち、多国籍企業の行動の自由を保証し、その利益を増大させるものです。
WTOの「2013年版世界貿易報告」によれば、米国の輸出の80%を1%の巨大輸出企業が、欧州の輸出の85%を10%の巨大輸出企業が取り扱っています。途上国でも、輸出の81%を5大輸出企業が実施。これをさらに促進する貿易円滑化が輸出大企業にのみ利益をもたらすことはWTO自身の数字からも明らかです。
食料の権利を否定
一方で、民衆や途上国が得たものはほとんどありません。
農業の分野では、国民の食料を確保し、小規模農民や貧困層を支援するため、国が穀物を市場価格よりも高値で買い上げ備蓄する制度を認めるようインドなどが主張し、先進国と対立。この制度を4年間認め、制度の存続について論議を行うことで合意しました。
しかし、備蓄制度が容認されるのは、インドのみでその他の国は適用対象外。しかも、暫定措置で、本来固有の権利である「食料に対する権利」を否定されたままです。
途上国が廃止を求めている米国や欧州連合(EU)などによる農産品の輸出補助金については、05年の閣僚宣言が撤廃を約束しているにもかかわらず、同じ約束を繰り返しただけ。後発開発途上国への優遇措置についても過去の約束の再確認にすぎません。
WTO批判の声明
国際農民組織「ビア・カンペシーナ」やアジアの非政府組織(NGO)の連合組織である「もう一つのアジアのための社会運動」(SMAA)は共同声明を出し、「少数者の手にいっそう富を集中させる自由貿易ルールを推進する機関であることを再び示した」と批判。WTOとたたかい、民衆の対案を提示する活動を倍増させると誓いました。
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SMAAのメンバーとともに記者会見を行う真嶋副会長(中央)=12月4日、インドネシア・バリ |
山形 田川食健連が学習集会
11月29日に、山形県鶴岡市の生協こぴあで、田川食健連(大高全洋会長)が主催し、県農協労が共催する「ストップTPP・学習総決起集会」を、全国食健連の坂口正明事務局長を招いて開催し、60人が参加しました。
坂口氏は、政府が交渉内容について参加前は「参加していないのでわからない」とし、参加後は「秘密契約があるから話せない」としていることに対し、「ウソの確信犯」だと述べ、「年内妥結」をアメリカと一緒に急ぐ安倍政権の姿勢を厳しく非難しました。
国民生活すべてに重大な影響を及ぼすTPPは、参加各国の反発があり交渉の行方も予断を許さないとしました。12月8日に行う中央行動への参加を呼びかけました。
加盟団体から6人の代表者が、それぞれの立場から訴えを行い、参加者全員でガンバロウ三唱。最後に、遠藤定県農協労執行委員長があいさつに立ち「地域では着実に声が広がっている。もっと広げてTPPからの撤退に追い込もう」と力強く締めくくりました。
(山形・庄内農民連 菅井巌)
(新聞「農民」2013.12.23付)
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