被災地で進む
“強い農業”の実態は
食糧のあり方問われるTPP
日本科学者会議
研究成果シンポ
日本科学者会議東京支部は11月30日と12月1日にかけて、研究成果を発表・交流する東京科学シンポジウムを開催しました。2日間で19分科会が設けられ、その一つとして食料問題研究委員会が「日本の食と首都圏の役割を考える」分科会を開きました。
生協の研究機関で長年にわたって生協や食の問題を研究してきた西村一郎さんは、「被災地から考える日本の食とTPP」をテーマに報告。西村さんは東日本大震災後、被災地に何回も足を運び、実態調査をしてきましたが、今回はそのなかでも、県の全耕地面積の11%が塩害の被害を受けた宮城県の農業の被災と復興の実態や課題を詳しく紹介しました。
県南部の亘理(わたり)町や山元町では、復興予算のほとんどがハウスイチゴにあてられ、こうした補助を活用して、ITベンチャー企業などの農外資本が入り込んで1ヘクタールを超える巨大な植物工場やビニールハウスが出現しています。
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山元町にできた広大なイチゴのビニールハウス |
西村さんは「高設ベンチ、液肥で育てられたイチゴは味も香りも薄いのに、東京のデパートでなんと1個1000円で売られている。しかも経営者は“東京で売れなくても、中国の富裕層に輸出すればいい”とまで言う。TPP加盟を見込んで“強い農業”の名のもとに植物工場などの集積化が進められているが、こうした農業がめざすのは、国民全体の食糧の安定供給や、安全な農産物とは全く別物だ。TPPは日本全体の食糧のありかた、社会のあり方を問う問題だ」と強い警鐘を鳴らしました。
(新聞「農民」2013.12.16付)
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