「農民」記事データベース20131216-1098-03

関税の全品目撤廃を要求する
アメリカに政府は屈するな

TPP交渉の現局面は


 12月1日に東京で行われた日米交渉で、アメリカのフロマン通商代表は、甘利担当大臣らに5品目を含む全品目の関税撤廃を要求したと伝えられています。これに対して甘利大臣は「これ以上1センチも譲れない」と拒否したとされています。

 甘利大臣が言った「これ以上」の「これ」とは何か。報道によれば日本政府は自由化率95%の方針を示したとされ、これに対するアメリカの回答は「全部譲れ」ということです。

 政府・与党は交渉力で「5品目を守る」と大見えを張ってきましたが、「全品目の関税撤廃」というTPPの原則には全く無力であるということです。

 アメリカは全品目の関税撤廃を要求しつつ、98%の自由化率をねらっているといわれています。そうなれば5品目の586の関税項目のうち、残るのは12項目以下で、事実上の全面撤廃です。テレビ討論で自民党の西川公也TPP対策委員長が農産物5品目の関税項目が「一つでも残れば公約違反ではない」と言い放ったのも現在の交渉局面を示しています。

 安倍首相は2月の日米首脳会談で、両国には「貿易上のセンシティビティーが存在する」ことを確認したとしてTPP交渉に参加しました。それにも関わらずアメリカが全品目の関税撤廃を要求してくるのは、この約束が国民を愚弄(ぐろう)するための“空手形”でしかなかったということです。

 12月3日、JA全中などが「TPP決議の実現を求める国民集会」を3000人規模で開きました。TPPに関する与党の決議と公約、国会決議を守れという要求が中心でしたが、“全部譲れ”というアメリカの要求と、交渉内容を明らかにしないまま、ずるずるとアメリカに譲歩する政府への怒りと不安を示す集会となりました。

 通商条約を締結する権限を持っていないアメリカ政府は、議会の承認を得るためにはあいまいな妥協ができない状況に追い込まれ、高いハードルを掲げざるを得なくなっています。これが各国と対立を深める原因になり、年内妥結を困難にしているといわれます。

 「全部譲れ」というアメリカの身勝手な要求と、この間の日本政府の欺瞞(ぎまん)に対する世論の怒りが大きく高まっています。安倍政権がアメリカに「ノー」といえばTPP交渉はまとまりません。TPP交渉の年内妥結を阻止し、交渉から撤退させるたたかいが求められています。

(新聞「農民」2013.12.16付)
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2013年12月

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