憲法を踏みにじって
「戦争する国づくり」に直結する
「秘密保護法案」に反対します
2013年11月6日
農民運動全国連合会会長 白石 淳一
一、安倍内閣は11月6日、「秘密保護法案」を国会に提出した。
同法案は、国民の知る権利、言論・表現の自由を脅かすなど、民主主義の根幹と国民主権、平和主義の日本国憲法の基本原理を根底から覆すものであり、強く反対する。
一、「秘密保護法案」は、防衛、外交、特定有害・スパイ活動の防止、テロ活動防止の4分野から「特定秘密」を指定し、それを漏えいした公務員やそれを聞き出すなどの行為者に厳罰を科すというものである。
「特定秘密」の基準と決定権は「行政機関の長」に委ねられる。TPP交渉についても、法案を担当する森雅子少子化担当相は10月29日の記者会見で、「(法案の)別表に掲げる事項に該当すれば、なる可能性もある」とし、TPP交渉の内容が同法案で漏洩(ろうえい)を禁じる「特定秘密」の対象になりうるとの認識を示した。このように、「行政機関の長」の恣意によってあらゆる事項が対象となり、秘密の範囲も期限も際限なく拡大される。
しかも、「特定秘密」の漏えいが故意・過失にかかわらず、未遂もふくめ最高懲役10年の重罰を科し、情報や調査の権限が警察に集中する仕組みになっていることも重大である。何が秘密なのか国民には知らされない。
一、法案は、「特定秘密」を扱う公務員や関係企業労働者、家族や関係者を対象に「適性評価」と称する人権侵害の調査で管理統制をはかろうとしている。報道関係者の取材活動や市民団体、一般市民による情報公開要求も、「共謀、教唆、せん動」とみなして処罰するなど、国民すべてが犯罪者にされる危険性をもっている。
さらに、国会が「特定秘密」を扱う場合は「秘密会」とし、漏えいすれば国会議員も処罰の対象にされ、国権の最高機関たる国会の立法権や国政調査権も制限する内容となっている。
このように「秘密保護法案」は、主権者国民が政府を監視するという立憲主義に敵対し、国民の目、耳、口をふさぐ基本的人権と民主主義を破壊する弾圧法にほかならない。
一、政府は、「情報漏えいの危険性の高まり」を制定の理由としている。しかし真のねらいは、アメリカが要求する集団的自衛権行使容認=日本を戦争する国にすることにある。それはこの法案が、外交・安全保障政策に関する権限と情報を首相を含む4人の大臣に集中し、機動的に対応できるようにするという「国家安全保障会議(日本版NSC)」とセットで準備されていることからも明らかである。
一、この重大な法案の内容は多くの国民に知らされていない。自民党安倍政権は国民が知らないうちに、国会内の多数を背景に「特別委員会」で一気に成立をはかろうとしている。
日本弁護士連合会、日本新聞協会、日本ペンクラブ、関係諸労働組合や市民団体、広範な人たちが反対と不安の声をあげている。
日本国民は、戦前の「軍機保護法」で悲惨な戦争に突入した痛苦の教訓のもとに憲法を制定した。1980年代には同様の内容を持つ「国家機密法案」を廃案にした経験ももっている。農民連は、憲法を守り生かそうとするすべての団体や個人とともに、「秘密保護法案」を阻止するために全力をあげるものである。
(新聞「農民」2013.11.18付)
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