TPP前提、究極の米つぶし政策
産業競争力会議、自民党
“アベノミクス”農政改革を検討
「所得倍増」どころか、10アール1万5000円の米所得補償を半分以下に減額し、対象農家も1割にしぼる――TPP決着を前提にした“アベノミクス”農政「改革」がキバをむいて暴走し始めました。
10月24日に開かれた産業競争力会議・農業分科会で、新浪剛史氏(ローソン社長)ら民間議員は、3年間で農業経営の規模拡大を実現し、米の生産コストを4割引き下げることを前提に、経営安定対策や水田活用交付金(転作奨励金)などの補助金を「ゼロベース」で見直すことを要求。
政府・自民党も、生産調整の廃止を含め、約40年間続いてきた政策の根本的転換を11月中にも決めるとしています。
TPP決着を前提にした究極の米つぶし政策を検討します。
米所得補償廃止はすべての農家に打撃
第1段階で手を付けるのは米の所得補償廃止です。
(1)10アール1万5000円の固定支払いを来年から7500円か5000円に大幅に削り、対象を現在の全稲作農家から認定農家か、4ヘクタール以上の農家にしぼりこむ(北海道は10ヘクタール)。対象は現在の1割以下になります。
(2)米価変動補償交付金は廃止。
これによって小規模農家を追い出し、企業と大規模農家に農地の8割を集中させるというねらいです。しかし、これは絵空事の議論です。
図のように、農家総所得に占める所得補償の比率は大規模農家ほど高く、20ヘクタール以上層では50%を超えています。もちろん、中小規模の農家も所得補償廃止と同時に米作りをやめる可能性はありますが、打撃が大きいのはむしろ大規模層です。
米の安定供給に対する国の責任を放棄
第2段階は国が米の生産目標数量を示すのをやめ、生産調整そのものを廃止することです。
これは、失政の象徴として評判の悪い減反政策の責任を棚上げし、これを機に米の安定供給に対する国の責任を全面的に放棄し、TPPのもとでアメリカ・ベトナムなどからの米輸入を前提に、市場原理にゆだねることにほかなりません。
米粉や加工用米、小麦、飼料作物などの作付けに対する水田活用交付金については、コスト削減や市場原理を前提に見直すとしており、決して安泰ではありません。
しかも米の加工品や畜産物を「聖域」としないという方針のもとでは、転作で作るものがないという事態に追い込まれることは必至です。
産業競争力会議の面々がもてはやすのは、穀物生産のないオランダ農業化、植物工場化です。こんな浅薄な青写真を許すわけにはいきません。
米価暴落対策は国庫負担なしの「収入保険」で
いま、政府の無策によって米価が暴落し、「米を作ってメシ食えねえ」という事態に追い込まれていますが、生産調整の廃止とコスト4割削減政策のもとでは大暴落は必至です。
その対策として政府が検討しているのは「収入保険」です。現にカナダなどで実施され、従来、政府が検討してきた収入保険は、国と農家が掛け金を出し合って、暴落による収入減を補てんする方式でした。しかし、いま政府が検討しているのは国庫負担なしの「民間保険」です。これは政策の名に値しません。
国民的反撃を
「やらずぶったくり」「やりたい放題」――これがアベノミクス農政であり、TPPです。最悪のゴールを示しておいて、“条件緩和”で自民党への支持をつなぎとめるという思惑も見え見えです。
しかし、消費税大増税と大企業減税、秘密保護法案などを含め、次の国政選挙が予想される3年後まで暴走を重ねるという戦略に未来などあるはずがありません。国民的反撃に立ち上がるときです。
(新聞「農民」2013.11.11付)
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