東電「風評被害収まった
一律賠償しない」
農民連が東電本社と交渉
180度転換姿勢に怒り次々
福島原発事故の農民連の賠償請求運動の経験交流会と、東京電力本社と農民連の交渉が、10月18日に東京都内で行われ、山形、茨城、栃木、埼玉、静岡、奈良の各県の農民連から代表者らが参加しました。
賠償請求運動交流会も
今回の経験交流会では、福島県以外の風評被害などに論点を絞って議論。まず農民連賠償チーム責任者の斉藤敏之常任委員がこの間の賠償請求運動の進展状況や問題点を報告し、つづいて各県の取り組み状況などを出し合い、討論しました。
東電は8月12日の農民連への説明で、風評被害について、「社内調査の結果から、野菜については価格下落が収まった。消費者の買い控え(風評被害)も収まったと判断した」として、今年4月以降の風評被害は「一律に賠償しない。それぞれ個別の事情を審査していく」と述べ、賠償に対する態度を180度転換してきています。
一方、食品の放射性物質の新基準が設定されたことなどを受けて、政府の原子力損害賠償審査会は今年1月に「中間指針第3次追補」を出し、検査費用や有機農産物などへの賠償を拡大するよう東電に求めています。
斉藤さんは、「東電は“もう風評被害は収まった、あとは事例ごとに個別に判断する”などと言っているが、実際には請求すら受け付けず、請求は受けつけても賠償基準を勝手に引き上げようとしている。第3次追補すら守らないのは、加害者として絶対に許されない態度だ」と指摘しました。
断じて風評被害なくなってない
茨城県西農民センターの初見安男さんは、9月に東電の水戸支社から社員が来て、「野菜が安いのは輸入が増えたせいで、もう原発事故が原因ではない。今後の賠償は極めて厳しくなるだろう」と説明したことを報告。「市場関係者に対する茨城県の調査でも、関西は3割弱が『取り扱いを控える』と回答していることが地元紙でも報道されており、断じて風評被害がなくなったのではない」と、怒りを込めて述べていました。
また第3次追補では有機農産物について、「通常のものと比べて風評被害を受けやすく、広範な地域において風評被害を受ける場合があることなどに留意すべきである」と指摘しています。
静岡県農民連の種石かおり事務局長は、「東電は“消費者庁の調査で『産地を気にする』という回答は4・1%しかなく、風評被害はもう終わった”と言って、いまだに25年産の請求書式を渡さないでいる。しかし無農薬茶として評価されてきた私たちのお茶の消費者は、まさにその4・1%に入る安全性にこだわっている人たちで、東電の説明では全く説得力がない」と、告発しました。
風評被害の実情に沿い賠償せよ
農民連が東電本社に迫る
東電との交渉では、風評被害を実情に即して賠償することや、原子力損害賠償紛争解決センターで合意した案件と同様の損害は、直接交渉でも同様に賠償すること、などを要求しました。
農民連は「風評被害の“個別の事情を証明する書類”とは何なのか」と詰め寄りましたが、東電は最後まで明言しませんでした。また、東電が風評被害は収まったという根拠とした「社内調査」についてもただしたところ、東京中央卸売市場での野菜全体の平均価格の推移データのみで判断していることが判明し、「まったく実態を見ていない。汚染水の垂れ流しが毎日ニュースになる状況で、風評被害はいっそう拡大しているのが現実じゃないか」と、強い抗議の声が上がりました。
(新聞「農民」2013.11.4付)
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