「農民」記事データベース20131028-1091-04

TPP

公約破り、「聖域」突き崩す
自民・西川対策委員長発言

関連/食健連・農民連関東ブロック 西川発言で自民党に抗議


安倍首相シナリオによる
国民だましの猿芝居だ!

 自民党は、米、麦、牛・豚肉、乳製品、甘味資源作物の関税は撤廃しないという公約を踏みにじり、「聖域」の突き崩しに乗り出しています。その口火を切ったのは西川公也・自民党TPP対策委員長。TPP首脳会合直前の10月6日にインドネシア・バリ島で、記者団に「関税撤廃できるかどうか検討する」と語りました。

 一気に中央突破図る

 「農林族のドン」と呼ばれる西川氏がなぜ、こんな発言を? 産経新聞(10月10日)がその裏事情をあばきました。同紙の報道によると――。

 「自民党の西川公也TPP対策委員長が重要5分野の関税撤廃可否を検討すると表明したのも首相サイドの根回しに基づくシナリオだったことが判明。首相はこの筋立てで一気に中央突破を図りたい考えだ。首相の意向を受けて動いたのは甘利明経済再生担当相(TPP担当相)。6日にバリで西川氏に会い、年内妥結に向けた首相の決意を伝えた上で、重要5分野を品目ごとに再検討する考えを西川氏が表明する段取りを整えた」。しかも「交渉参加を表明した3月以降、水面下で重要5分野の精査をすでに進めていた」。

 つまり、首相が甘利氏を通じて、西川氏に3月以来描いてきたシナリオを伝え、西川氏は甘利氏との会談直後に記者会見したというわけです。国内では、石破茂幹事長と菅義偉官房長官がただちに西川発言を追認する手際のよさ。国民だましの醜悪な猿芝居です。

 内から裏付ける発言

 「産経」以外のメディアは、事情を知ってか知らずか、沈黙したままです。しかし、町村信孝元官房長官の次の発言は、猿芝居ぶりを裏付けています。「(西川氏の発言を)『新聞を見て、わが目を疑った。あれが事実であれば、だましだ』と批判。同時に安倍晋三首相や甘利氏にも次のように苦言を呈した。『安倍さんがこう言っているという“安倍カード”を切るところが甘利氏のまずいところだ。おかしなものはおかしいと言うのも首相を支えることになる』」(産経10月11日)。

 鈴木宣弘東大教授は「5品目には586の細目がある。各品目のうち一つの細目さえ守れれば、5品目が守られたと言い張るつもりなのだろう。絶対に譲れない聖域を譲ってしまえば、日本の食料生産は崩壊する。地域の農地は崩壊し、関連産業も成り立たなくなり、日本中が限界集落になる。限界列島だ」と批判しています(10月12日、岩上安身氏によるインタビュー)。

 「聖域」を「攻める」

 安倍首相は15日に行った所信表明演説で「TPP交渉では、日本は、今や中核的な役割を担っている。年内妥結に向けて、攻めるべきは攻め、守るべきは守り、アジア・太平洋の新たな経済秩序づくりに貢献する」と述べました。「中核的な役割」を担う猿芝居の主役が「攻める」のは「聖域」であり、「貢献する」のは「アメリカ本位の新たな経済秩序づくり」にほかなりません。


食健連・農民連関東ブロック
西川発言で自民党に抗議

 全国食健連は10月15日、自民党本部を訪れ西川氏の「重要5品目の見直し」発言に抗議しました。

 自民党組織運動本部の担当者は「あくまで影響を検証するだけで、自由化することは前提としていない」と答弁。しかし「影響がない場合は譲ることもあるのか」との問いには「そういうこともあるかもしれない」と答えました。

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担当者に抗議する坂口全国食健連事務局長(前列中央)

 また、西川発言は、石破茂幹事長、森山裕「TPP参加の即時撤回を求める会」会長も確認済みで、自民党としての見解であることも確認しました。

 さらに、農林水産委員会が決議した(1)ISD条項は認めない(2)情報を開示し、国民的議論を措置する―との2点について、すでに守られていないことも認めました。

 農民連関東ブロック協議会(代表・大木傳一郎千葉県農民連会長)は10月11日、西川氏による発言の撤回と議員辞職を求めて、議員の地元、栃木県さくら市の現地事務所を訪れました。応対した担当者に対し、大木代表が「自らの公約を裏切り、農産物5品目の関税撤廃を容認するとは許せない。発言を撤回し、議員を辞職せよ」と厳しく抗議しました。

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抗議する農民連関東ブロックの代表ら

(埼玉県農民連 松本慎一)

(新聞「農民」2013.10.28付)
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2013年10月

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