「農民」記事データベース20131028-1091-02

みほん市にヒノヒカリ出品

産直がいいのは顔の見えるところ
お米を育ててくれる自然の顔です

「伊都国 おなご米」生産者
福岡・糸島 鬼木恵美子さん

関連/ふるさと産直みほん市2013
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 「みほん市」に出品する福岡県の「伊都国(いとこく)おなご米」の生産者、鬼木(おにき)恵美子さんを紹介します。

 青年活動に情熱

 邪馬台国や卑弥呼が登場する中国の歴史書「魏志倭人伝(ぎしわじんでん)」に、「伊都国」という小国が出てきます。今の福岡県糸島市です。この地域には、消費者の要望で農民組合が結成されるという、全国的にも珍しい誕生秘話をもつ「糸島農民組合」があります。地元の新日本婦人の会の会員は、8割以上が糸島農民組合の米産直を利用しています。その産直米の生産者の一人が、鬼木さんです。

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父親の遺志をついで農薬を使わないで取れるだけの農法で米を作っています

 鬼木さんは4年前に父親が他界、その遺志を継いで6反の田んぼで米を栽培しています。友達に手伝ってもらうこともありますが、種まきから田植え、刈り取り、かけ稲まで、ほとんど女手一つでこなしており、鬼木さんの作るお米は、名づけて「伊都国おなご米」です。

 若い時は青年活動に情熱を燃やし、両親の農業を手伝いながら手弁当で福岡県青年団の事務局や全国の役員をしたという経歴の持ち主。

 バインダー刈り

 今は使う人も少ないバインダーで稲を刈り、稲束をかけ干ししています。「今はお金中心の世の中、立ち止まる勇気と戻る勇気も必要だから、昔のやり方でのんびりやります」と話す鬼木さん。「除草剤を使わないからアワもたくさん生えるけど、バインダーとかけ干しだから平気です。農薬を使わないでも取れるだけをとればいいという農法で米を作り続けています」と動じませんが、今年は「イモチ病が入って、少量の農薬を使ったのが心に引っかかって…」と、少し残念そうでした。

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掛稲の材木は知り合いの大工さんがくれた

 「みほん市」にはヒノヒカリを出品します。「本当に少ししか作っていないのに、おなご米なんて取り上げられて、恥ずかしいです。でも農民連の産直のいいところは、顔が見えるところ。作っている人の顔、食べる人が喜んでくれる顔、お米を育ててくれる自然の顔…。本当の元気はそういうところにあるんじゃないでしょうか。『みほん市』も人の顔が伝わる機会になってほしいと思います」と話しています。

 「丑の稲」残して

 取材したこの日は「丑(うし)の稲」12株を残して稲刈りを終了。「丑の稲」というのは、九州北部に伝わる田の神様をまつる習わしで、霜月(11月)の丑の日に刈り残した12株を主人が刈り取り、軽くても「重い、重い」と言いながら運び、土間の臼の上に赤飯などと一緒に供えるのです。鬼木さんは今でもこの丑の日に一升餅をつき、塩ゆでした小豆でくるんだ「一升小豆餅」を友達に配るそうです。鬼木さんはいつまでも残し、伝えたい農村文化の守り手でもあるのです。
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刈り残した「丑の稲」12株

(福岡・若宮農民組合 藤嶋嘉子)

(新聞「農民」2013.10.28付)
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2013年10月

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