福島県会津の農民作家・前田新著
『峠の詩「神籠の自然村」物語』を
読んで
福島県農民連 佐々木健三
限界集落の若者たちが
廃虚の村を蘇らせる物語
このたび、福島県会津美里町在住の農民作家、前田新(まえだ・あらた)さん(元福島県農民連副会長)が表題の小説を出版されました。これは前作『彼岸獅子舞の村』(第51回農民文学賞受賞作品)の姉妹作と言える内容で、一気に読み切れる実にさわやかな作品となっています。
残るはわずか8戸
物語は全国どこにでもある山村のきびしい現実、限界集落で今にも灯が消えようとする会津地方が舞台となっています。
村の人々は、津軽出身の歌手、吉幾三が「おら、こんな村いやだ」と歌っているように次々と都会に出てしまい、わずかに残るのは8戸となり、主人公の芳雄も雪解けを待って、春にはこの村を出ようと腹を決めていました。
ある日、芳雄は村の長老と話すうち、恩師の「くらげ先生」の自然や命の大切さを説く熱意に心が大きく揺れ動き、ふともう少し村に踏みとどまることになります。
単に夢物語でなく
物語はここから大きく展開し、思わぬ方向へ次々と広がって行き、一気に読者を引き込んでいきます。今まで見向きもしなかった広大な山林や豊かな自然環境がさまざまな資源にあふれていることを発見しました。その豊かな資源が若者たちの心に灯をともし、老若男女の力も生かされ、廃墟(はいきょ)の村が生き返っていく様は、読み手をわくわくさせるものとなっています。それは単に夢物語でなく、実にリアリティーに富んでいます。
自ら先進的実践を
例えば加工や販売、組織運営など実にみごとな展開をします。実は作者の前田氏は自ら法人を作り、共同作業や共同出荷などこの道でも先進的な実践をされています。
何よりも自ら農作業に励み、ひたいに汗することから生まれる生きた経験が反映されています。そこが私たち農民が共感を覚えるゆえんです。
原発事故被災者の私たち
展望と勇気をもらった
また、福島県は原発事故による困難な状況におかれ、原発ゼロをめざす運動の中で再生可能エネルギーを興す取り組みをすすめていますが、作品は地の利を生かして小水力発電に取り組み、それを完成させています。これは実に先駆的で、よくぞここまで研究されたと私たちに感銘を与えます。
この著書は、困難な中で日夜励んでいる私たちに対して展望と勇気を与えるものになっています。それは日本の農業の将来と原発事故からの再興を目指す人々に対しても、心の支えになるものと思います。
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定価 1800円(1714円+税)
注文・問い合わせ 株式会社SAGA DESIGN SEEDS TEL 024(597)6800、FAX 024(546)1587
(新聞「農民」2013.10.21付)
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