「農民」記事データベース20131007-1088-02

関西しいたけ生産者が東電と交渉

原木の産地変更による
減収分の請求を受理

関連/TPPは神奈川の自然と里山を破壊する


原木の違いで出荷量減少
かかり増し費用も賠償を

画像  9月12日、和歌山県紀の川市の紀ノ川農協で、奈良、大阪、和歌山県のしいたけ生産者で組織する「原発事故問題原木椎茸(しいたけ)生産者連絡会」と、東電の各府県の賠償担当者との交渉が行われました。

 原発事故以来、原木の産地変更を余儀なくされ原木の調達に苦労していることや、原木の質が違うことから、発生率の低下や、発生回数の減少を招き、出荷量の減少から収入が減り、今後の原木買い付けの「予約金が払えない」など、経営存続にかかわる事態が続いています。

 当日、奈良県農民連の竹島茂直事務局長ほか4人、大阪農民連高槻支部の河村正志事務局長ほか3人、和歌山農民連の平野友基事務局長ほか6人と県連役員3人、農民連本部から斎藤敏之常任委員の合計20人が参加しました。

 東電側は、福島原子力補償相談室の各府県担当3人と「生産者の会」担当の君塚直木氏の合計4人が参加しました。

 交渉では、生産者一人一人が東電に対し、「原木の産地変更によって、40年間も使ってきた福島の原木とは違うことから、木の性質に合わせた栽培技術がわからず、発生率が落ちる上、品質も悪くて出荷が激減している」「風評被害などで出荷できなくなってしまった」との声が出されました。

 農家の切実な不安を訴えて

 また、原木不足や発生率低下に伴う売り上げの減少を補うための努力やそれに伴うかかり増し費用の賠償の必要性などを切実に訴えました。

 和歌山の生産者は、「自分で産地に行き、自分の目で確認した原木を買い付けできないため、運ばれてくる原木に植菌し生産しなければならない。私たちにとって、原木は田畑です。自分で田畑の状態がわからない。農家にとってどれだけ不安で大変かわかるか」と声を震わせながら訴えました。

 また、そうした不安を払しょくするため、九州の産地まで出かけ、新たな原木を確保するのに要した費用の賠償や、原発事故前に買付単価の値上げを約束していたにも関わらず、風評被害により値上げを拒否されたうえ、買付数量も減少した分の賠償、自主検査のために検査機器を購入した費用の賠償などを求めました。

 さらに、生シイタケだけでなく、干しシイタケの価格暴落による売り上げ減少に対する賠償などを強く訴え要請しました。

 発生率低下分の請求受理させる

 交渉前に「生産者の会」と東電は、原木代金の高騰による値上がり分の賠償をはじめ、原木不足に伴う売り上げ減少による減収分の賠償についての請求は合意していました。しかし、東電は原木の産地変更に伴う発生率低下による売り上げ減少の賠償請求は拒否していました。

 交渉後、東電の君塚氏から「実情を聞き、発生率の減少による減収分の請求も受理します」との電話連絡があり、さっそく請求書の提出に向けた準備を始めました。

 なお、東電に対して文書で申し入れた項目については、9月末までに文書で回答することを確認させました。


TPPは神奈川の
自然と里山を破壊する

神奈川農問研などが合同学習会

画像  神奈川農業問題研究会、県農民組合などでつくる「TPP反対県内合同学習会実行委員会」は9月23日、相模原市内で「TPPは何をもたらすか――TPPをより深く知り反対運動を強める県内合同学習会」を開きました。

 神奈川農問研の小川政則さんは「TPPは神奈川の自然と里山を破壊する」とあいさつしました。

 東京大学の鈴木宣弘教授がTPPをめぐる情勢について報告。TPPへの参加で聖域、国益は守れないことを示し、「1%の利益のために99%を犠牲にしていいのか。失うものが最大で得るものが最小なのがTPPだ」と述べました。

 市民バイオテクノロジー情報室の天笠啓祐代表は、「TPPで奪われる食の安全・安心」のテーマで報告。グローバル化が家畜と人間の感染症の増大をもたらし、食品添加物、残留農薬、遺伝子組み換え食品の規制緩和を招くと指摘。「TPPと自由化で遺伝子組み換え作物が拡大し、食料支配もさらに進む」と述べました。

 鈴木、天笠両氏に対して質問。「TPP反対で当選した国会議員に選挙区でどう対応したらよいか」との質問に、鈴木氏は「国会議員や推進派の人たちに抗議の声を集中しよう。知らない人たちにTPPの中身を伝えてほしい」と述べました。

 天笠氏に対しては「TPPで地元産農産物を使った学校給食ができなくなるのでは」との問いに「地元産を使い続けることが大事。生産者と消費者がつながっていくことが求められる。地域でがんばってほしい」と激励しました。

 講演はさらに続き、JA津久井郡農協の山口耕一組合長が、津久井の農業の特徴や現状を述べ、首都圏からの新規就農者が増え、津久井在来大豆を生かした取り組みが広がっていることなどを紹介。「地域に安全なものを提供していきたい。TPPは断固として撤退を求める」と訴えました。

 神奈川北央医療生協の中屋重勝さんは「TPPで医療品・医療機器は高い値段を押しつけられ、医療・介護の民間保険にアメリカ資本が進出し、お金で買うアメリカ型医療への転換が迫られる」と告発しました。

(新聞「農民」2013.10.7付)
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2013年10月

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