「農民」記事データベース20130916-1085-09

地元産野菜使って
トマト大福 トマト羊かん

東京・小金井 和菓子店「亀屋」さん

関連/手間かけて伝える大根の自家採種


「野菜が材料」には大苦戦
試行錯誤の末、新名物登場

 「地元の野菜で新しい名物を」地元産のトマトを使った大福と羊かんを作っている和菓子屋さんがあります。東京都小金井市の新小金井西口商店街にある「亀屋」さんです。小金井市では江戸東京野菜の復活・普及を通じたまちおこしを行っています。
(渡邊信嗣)

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「亀屋」の海老原満さん(左)と千鶴子さん(中央)、康二さん

 ルバーブ、小松菜でも挑戦して

 きっかけは、「農協での会合に出すお茶請けが作れないか」という地元農家の依頼でした。しかし、葛藤(かっとう)もあったといいます。店主の海老原満さん(80)いわく「職人はみんな頑固だから。野菜で菓子ができるわけねぇ、っていう先入観がありました」。地元の地産地消の取り組みに何か協力しなければ、という思いで挑戦を始めました。

 すぐにアイデアが出たわけではありません。考え込んでいた時にふと見た折り込み広告のトマトに目が留まり、「トマトでできないか」と思いつき、その後も試行錯誤を続けて、トマト大福が出来上がりました。その過程で、奥さんの千鶴子さん(77)から「羊かんもできないか」とアイデアが生まれ、羊かんの開発にも取り掛かりました。出来上がった羊かんのパッケージには、自作のはんこでトマトのイラストがプリントされています。食べてみると、どちらもトマトの酸味が味を引き立てておいしく仕上がっていました。

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トマト大福(左上)とトマト羊かん(左下)

江戸東京野菜の普及や
まちおこしにひと役

 野菜から菓子を作るにはかなりの苦労があったといいます。

 今、店は息子の康二さん(43)と親子2代で経営しています。今後も「ルバーブや小松菜などの野菜で新しい製品ができないか挑戦していきます」と、展望を語ってくれました。

 地元野菜農家が快く申し出受諾

 材料のトマトを作っているのは地元農家の萩原英幸さん(34)。きっかけは偶然だったといいます。地元のトマトを買いに農協に来ていた海老原さんと出会って、提供を申し出たのがきっかけでした。

 10アール弱の農地で野菜を栽培している萩原さんは最近になってある変化を感じています。「地元の人が直接買いに来ることが多くなりました。もぎたてをその場でお渡ししていますが、新鮮な野菜はおいしいとリピーターが非常に多いです」。地元の小学生も、もぎたてトマトを食べに来ています。「これからも地域との交流には、積極的に取り組みたい」と萩原さんは話してくれました。

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野菜農家の萩原英幸さんと息子の舜也くん(7)


手間かけて伝える大根の自家採種

画像  9月上旬、自家採種のために、大根の鞘(さや)をたたく作業をしました。

 大根は他のアブラナ科の鞘と違い、鞘が発泡スチロールみたいで、硬く、しっかり種を守っていて、乾けば自然に種が弾ける構造ではありません。たたいて中の種を出します。世話の焼ける種です。その上、一鞘に数粒しか入っていません。

 日本には在来種が多数ありますが、「人が手間をかけて伝えて来たのだなあ」と、思いをはせています。

(「農の会」会員 長野県在住 石綿奈巳)

(新聞「農民」2013.9.16付)
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2013年9月

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