米先物取引の延長を認可
試験上場“不合格”が明白なのに
農水省
米の需給と価格の安定こそ
異例の条件つけて
政府・農水省は8月7日、大阪堂島商品取引所(堂島商取)が申請した米の先物取引の試験上場の延長を認可しました。試験期間中の過去2年間、まともな実績が残せず、「不合格」がすでに明白にも関わらず認可した政府・農水省の姿勢が厳しく問われています。
農水省は認可に際して、「これまでの実績を上回る取引量や参加者の多様化」を求めました。こうした異例の条件をつけたこと自体、この間の試験上場が「不合格」であったことを農水省自身が認めたものにほかなりません。
農水省は従来から「当業者のリスクヘッジに先物は必要ではないか」などと主張し、試験上場期間中に事業閉鎖に追い込まれた東京穀物商品取引所を堂島商取へ移管させて救済するなどしてきました。農水省の「先物取引認可ありき」の姿勢はミエミエでした。
延長反対の意見次々
一方、自民党は、2年前、民主党政権が試験上場を認可した際には「主食の米を投機の対象にする先物取引の認可は暴挙」として、「認可撤回」を要求していました。今回の「延長申請」に対して、8月1日の自民党水田農業振興議員連盟の議論では「延長申請は断るのが筋」「延長は許されない」「認めるべきでない」などと延長に反対の意見が続出したとされています。
ところが自民党は最終局面で、農水省に「慎重な対応を求める」と大幅にトーンダウンしてしまいました。「TPP断固反対!」を公約しながら選挙が終われば、TPP参加を決めた同じやり口なのでしょうか。
東日本大震災以来、高値を維持してきた米価がいま、わずかな需給見通しの狂いから下落に転じ、2013年産米は20パーセント近い過去に例のない暴落へと突き進もうとしています。
取引活性化よりも
生産者はもとより米業者にとっても事態は深刻です。米づくりで採算割れが続けば、国産米の供給そのものが危ういことになりかねません。政府・農水省がいまやるべきことは、あらゆる手立てをつくして米の需給と価格の安定をはかることであり、大幅な価格変動を金もうけのチャンスにする投機家を呼び込んで先物取引を活性化させることなどではないことは誰の目にも明らかです。
(農民連ふるさとネットワーク 横山昭三)
(新聞「農民」2013.9.9付)
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