TPP
強まるアメリカと交渉参加国の対立
合意でっちあげと
安倍政権の裏切りを
許さない運動を
8月22日から30日までボルネオで開かれていた第19回TPP交渉は、恒例の記者会見も行わず、「作業を最も一般的な言葉で記述した共同声明」(アメリカの貿易専門紙)を発表しただけで終了しました。
日本政府の鶴岡公二TPP首席交渉官は「進展がまったくないという分野はなかった。しかし、解決して仕上がったという分野もない」と述べざるをえませんでした。
またTPPを推進する日本のマスコミが「米vs新興国、見えぬ着地点」(産経)「年内妥結は不透明」(読売)と報じざるをえなかったように、今回の交渉が示しているのは、国内の選挙対策と多国籍企業の利益を最優先して「年内妥結」を強要するアメリカと他の参加国との鋭い対立です。
「先発薬」の価格は数倍から20倍
対立の主なテーマは表の通りです。その根っこにあるのは、アメリカがTPP交渉参加国の経済の発展段階や各国の主権を無視して、多国籍企業本位のルールを押しつけようとしていることです。
たとえば、知的財産権の分野。巨大製薬企業は、特許期間の延長や効能のわずかな変更によってジェネリック(後発)医薬品の締め出しをねらっています。「先発薬」の価格はジェネリック薬の数倍から20倍。低所得者層から医療を受ける機会を奪うことになります。
マレーシアが「安価な医薬品へのアクセスを否定するいかなる提案にも同意しない」ことを閣議で決定しているのは当然のことです。
決定的に重要な局面
マレーシア政府高官は、年内妥結には「拘束されない」「われわれは決定的に重要な局面に到達している。いまこそ、交渉を継続するのか、やめるのか、吟味する必要がある」と述べ、離脱を示唆しています(「AFP通信」8月30日)。
世界のNGOとともにTPP反対の先頭に立ってきたジェーン・ケルシーさん(ニュージーランド・オークランド大教授)は、年内妥結という「目標未達成が習慣化する可能性がある。強い圧力をかけすぎれば一部の国が離脱する可能性がある」と指摘しています(「ニュージーランド・ヘラルド」8月27日)。
さらに「ニュージーランドの貿易大臣は、質の低い取り決めよりは合意がない方がましだと述べているが、本当に合意なしの結果になるかもしれない。こうした緊張から、一方で2013年という目標を唱えながら、裏では交渉の失敗を予測するという玉虫色状態になっている」と痛烈に批判しています。
秘密主義の交渉がさらに地下に潜る
それにもかかわらず警戒しなければならないのは、アメリカやメキシコなどで、さらに地下に潜った極秘交渉を行い、10月のTPP首脳会議で「合意」をでっちあげる危険があることです。
安倍政権はブルネイで、農水産物の関税撤廃反対を明言しないどころか、ISD(投資家対国家間の紛争解決)条項の導入や金融サービスの自由化を要求するなど、アメリカの“腰巾着(ぎんちゃく)”ぶりを見せつけました。
合意でっちあげと安倍政権の裏切りを許さない運動をますます強めることが求められています。
(新聞「農民」2013.9.9付)
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