“生まれてはじめて体験した豪雨”
豪雨被害の雫石(岩手)を訪ねて
農民連事務局長 笹渡義夫
垂直に切り崩された水田
政府・自治体の復旧対策待ったなし
山形、山口、島根、秋田各県など、全国各地で記録的な豪雨が吹き荒れて甚大な被害が引き起こされています。政府は「激甚災害」を発動する方針ですが復旧対策は待ったなしです。
こうしたなか、8月9日朝からの雨量が100ミリを記録した岩手県雫石町を、岩手県農民連の岡田現三事務局長の案内で訪ねました。
広々とした水田の中を蛇行している小さな川の濁流がどっとあふれ出し、道路が深くえぐられ、穂をつけて青々と成長した稲が随所で土砂に埋まっていました。
同町西安庭(にしあにわ)地区の旭台集落に住む、岩手県農民連の役員をしている大田勲さん(71)を訪ねました。集落の高台にある大田さんの家のすぐ上の農業用の30アールほどのため池が大雨に耐えきれずに決壊し、周辺の水田を埋め尽くし、泥水が床上まで流れ込んだ住宅もあります。
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大田勲さん |
集会所に泥が…避難もできず
雨がやんで蒸し暑く晴れ上がったこの日は、家族総出で家具や農機具、牧草ロールなどを道路沿いに出している家が何軒もありました。
大田さんは「生まれてはじめて体験する大雨だった」と言い、「避難指示が出されたけど、集会所に泥が流れ込んで避難できなかった」と当時の状況を語ります。ため池に隣接した大田さんの水田(2・2町歩)の一部が泥で埋まったものの、「決壊した水の流れが脇にそれたから母屋は何とかなった」と胸をなでおろします。
豪雨のすさまじさを目の当たりにしたのが、雫石川に面した高台の水田が“ナイアガラの滝”状に切り崩されていたことです。西安庭地区に用水をポンプアップしている機場の取水口も泥で埋まり、地区総出で復旧にあたったといいます。
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土砂で水田も削り取られました |
大田さんは「政府や自治体が対策を取らなければ復旧はできない」と言い、1日も早い対応に期待しています。
(新聞「農民」2013.9.2付)
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