対米追従やめ、
交渉から撤退を
関連/本格的交渉入りに抗議
米国による 米国のためのTPP 鮮明に
「急ぐ米 日本追従」(東京新聞)――8月22日からブルネイで開かれているTPP交渉で、アメリカの強引な横車と、これに追従する日本政府の弱腰が鮮明になっています。
(1)来年11月のアメリカ中間選挙に向けた実績作りのために年内妥結を交渉参加国に押しつけ、(2)そのため、本来は開催国が務める議長のいすにフロマン米通商代表が座る、(3)8月に続いて9月にも閣僚会議を開くことを強要――国内の選挙対策と多国籍企業の利益を「最優先課題」といってはばからないアメリカの横暴な振る舞いは、TPPの危険な本質を浮き彫りにしています。
閣僚声明のポイント
23日に発表された閣僚会議の共同声明のポイントは2つ。1つは「各国が相互に受け入れ可能な協定を作り上げるための方策を探った」ものの、関税撤廃、投資、金融サービス、政府調達、知的財産、競争政策、環境の7課題で依然として溝が深い状態を認めたこと。
もう1つは10月上旬のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際に開かれるTPP首脳会合を「重要な節目」としたこと。日本のマスコミは、これを「年内妥結で一致」の根拠にしていますが、もともと10月にTPP首脳会合が開かれるのは1年前から決まっていたことです。むしろ、アメリカが提案した9月閣僚会議開催が合意されなかった事実の方こそ注目されるべきです。
アメリカに対する警戒と反発
閣僚の共同記者会見で、アメリカの交渉手法に対し「いらだちがないか」と問われたマレーシアは「ある。閣僚会議で、現在の提案に懸念を表明した」と言い切りました。
その背景にあるのはマレーシアの自主的な態度です。同国は8月15日に特別閣議を開き、ジェネリック医薬品の入手を不可能にする提案(知的財産)や、国営企業・政府調達の開放を求める提案などに反対し、主権を断固として守ること、年内妥結などの日程には拘束されないことを決定しています。
国営企業問題ではベトナムやシンガポール、ISD条項(投資家対国家間の紛争解決条項)ではオーストラリアがアメリカ提案に反対しており「主張を強硬に通そうとする米国主導の交渉に懸念を示す国は多い」(交渉筋)のが実態です。
一方、日本は農産物自由化に反対する提案をまともに行わず、アメリカの尻馬に乗って年内妥結の旗を振っています。口では“アメリカと途上国の橋渡し”などと言っていますが、アメリカの横暴に対抗しようとする国々と歩調を合わせようという姿勢はみじんも見られません。
「合意」でっちあげの危険も
アメリカは年内妥結をあきらめるどころか「ゴールは間近」などと強弁して、ゴリ押しする姿勢を強めています。
アメリカのNPO「パブリックシチズン」は交渉に先立って緊急声明を発表し、「テキスト(条文)が全くできていない章が存在し、最も困難な政治決定の問題が解決されていない」と指摘。それでも「ゴールは間近」と強弁するのは、10月にドサクサまぎれの「合意」をでっちあげ、その後に「さらに地下にもぐった秘密主義の交渉」が進む可能性があると批判しています。
TPP反対、秘密主義の交渉からの撤退を求める私たちの運動は正念場を迎えています。
本格的交渉入りに抗議
市民アクション
東京・新宿で宣伝
TPPブルネイ会合が始まった8月22日、各地で撤退を求める行動が取り組まれました。「STOP TPP!! 市民アクション」は、東京・新宿駅西口で、交渉参加に抗議するリレートークを行いました。
築地市場の労組、全労連・全国一般東京地本東京中央市場労組の中澤誠書記長は「会社経営が農業と漁業の分野に土足で踏み込むことになり、TPPへの参加で、それがあらゆる分野で起こることになる」と警鐘を鳴らしました。
「TPPで最も大きな被害を受けるものの一つは農業だ」と呼びかけたのは農民連の笹渡義夫事務局長。「食品表示など日本の食の安全を守るルールが厳しいからアメリカの輸入が増えないと撤廃を迫ってくる可能性がある。こんなことを許してはならない」と批判しました。
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訴える笹渡事務局長(中央) |
「TPPに反対する弁護士ネットワーク」の中野和子事務局長(弁護士)は、「投資家、一企業が国家を訴えることができるISD条項は国家主権に対する重大な侵害だ」と怒りの声をあげました。
パルシステム生活協同組合連合会の瀬戸大作さんは、アメリカが学校給食の地産地消を「競争の妨げだ」と非難していることを紹介。「みなさん、家に帰ったらご家族に『安全なものを食べたい。TPPは反対』と話してください」と呼びかけました。
「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」の醍醐聰・東大名誉教授は、医薬品の知的財産権の保護を盾に、アメリカの高価な医薬品の特許権が先延ばしされ、お金のない人は安いジェネリック薬が使えず、助かる命も助からないと指摘。「命を天びんにかける多国籍企業の横暴を許してはならない」と述べました。
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アンケートで通行人と対話しました |
全日本民主医療機関連合会の藤末衛会長(医師)は、「日本では国が薬価を決めることになっているが、TPPでそれが“障壁”とみなされる。今はお金がある人もない人も必要な医療を受けられるが、TPPでお金のある人は医療が受けられ、ない人は受けられなくなる。それを許していいのか」と問いかけました。
弁士の話をずっと聞いていた東京都調布市に住む会社員の男性(36)は「TPPに参加することばかりが優先され、情報もなく、わからないことばかり。国益も守れるのか期待できない。撤退しかない」と話していました。
(新聞「農民」2013.9.2付)
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