低価格競争のもとで深刻化する
外食産業の低賃金・長時間労働
ブラック企業大賞実行委員首都圏青年ユニオン
河添 誠さんに聞く
ブラック企業大賞の実行委員で、首都圏青年ユニオン青年非正規労働センター事務局長の河添誠さんに、話を聞きました。
◇
外食産業でブラック企業といわれるような労働実態が広がっている背景には、国民全体の給与所得が減り、外食市場そのものが縮小傾向にあるなかで、経営路線が「高価格・高サービス」と「低価格・低サービス」とに二極化していることがあると思います。
低価格・低サービスの路線では際限のないコスト削減がされることになりますが、コスト削減といっても削れるのは食材費と人件費くらいしかない。人権侵害的な労務管理でなければ企業が利潤をあげられないところまで、過当競争、低価格競争がギリギリまで来ているということではないでしょうか。またこうした大手の外食産業は比較的新興産業で、労働組合運動がないということも、非常に大きいと思います。
外食産業に限らず、ブラック企業がなくならないのは、他方に、今の非正規雇用をめぐる労働環境の劣悪さがあるからです。正社員をやめてしまったら、不安定で劣悪な非正規雇用しかないと思って、やめたくてもギリギリに疲弊するところまで追い詰められながらも働いてしまうのです。
“まともに食べられる”社会に
もう一つ指摘しなければならないのは、こうした異常に安い食品がなければ生活できないワーキングプアの人々がたくさんいるということです。これは多くの人が低賃金だから、異常に低コストの外食産業や食品が必要だという安直な議論ではありません。しかし安い外食店に行くとわかりますが、若い女性や高齢者の客も増えている。それだけ貧困が深刻化していて、安い外食産業の需要が広がっているのです。
そもそも労働者の賃金や労働条件がまともにならなければ、まともな農産物を、まともに食べるという社会を取り戻せないと思います。ブラック企業のような長時間労働や、非正規雇用のひどさをなくしていくことも含めて、労働者の労働条件を良くしていくことも、広い意味で、農民運動を含めた社会運動の課題であるのではないでしょうか。
(新聞「農民」2013.8.26付)
|