「農民」記事データベース20130826-1082-01

大賞は(株)ワタミフードサービスに決定

365日24時間 死ぬまで働け
ワタミ「理念集」から

第2回ブラック企業大賞

関連/外食チェーン各社のノミネート理由


大手外食チェーンが
ノミネート企業にズラリ

 低賃金、長時間労働、セクハラ、パワハラ、いじめ、残業代未払い――労働法などの法律を守らず、過酷な労働条件を意図的・恣意的に強いる「ブラック企業」を選定する「ブラック企業大賞2013」の授賞式が8月11日、東京都内で開かれました。

 この賞は、ブラック企業を生みだす背景や、社会的構造の問題を広く伝え、誰もが安心して働ける環境をつくることを目指して、同賞の実行委員会が昨年から開催しているもので、実行委員には労組役員や弁護士、ジャーナリスト、NPO事務局長など労働問題に詳しい11人が名を連ねています。

 第2回となる今回、不名誉な大賞を受賞したのは、居酒屋チェーンや介護事業を全国展開する「ワタミフードサービス株式会社(以下ワタミ)」です。同賞ではインターネットを通じた一般投票も行われ、3万501票(会場投票含む)が寄せられましたが、そのうちなんと72%がワタミに投票。“ぶっちぎり”の一般投票賞と大賞のダブル受賞となりました。ワタミは昨年の市民賞に続いて、2回目の受賞です。

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会場でのシール投票でもワタミが“圧勝”

 ワタミといえば、全国10カ所に直営農場を展開し、大企業による農業への参入・支配を推し進める財界の“露払い役”ともいうべき役割を果たしている企業でもあります。また創業者の渡邉美樹氏は、今年7月の参議院選挙では「TPPの推進」「TPPに負けない競争力ある農業」を掲げて、自民党の比例代表候補として出馬し、ギリギリで当選しました。実行委員会は、「ワタミは、現在に至るも過労自殺に追い込まれた女性社員の遺族との面談も謝罪も拒否しており、こんな対応をしても国会議員になれるという誤ったメッセージになってしまう」と、渡邉氏の姿勢を厳しく批判しています。

 さらにこのブラック企業大賞で注目されるのは、外食産業が数多くノミネートされ、しかも「激安」が売り物の大手チェーン店ばかりという点です。昨年ノミネートされた10社中3社(ワタミ、すかいらーく、ゼンショー[牛丼チェーンすき家])、今年は8社中3社(王将フードサービス[餃子の王将]、(株)サンチャレンジ[ステーキのくいしんぼ]、ワタミ)が、多くの人が知っている外食チェーン店であり、その「ブラック企業」と呼ぶにふさわしい違法な働かせ方に、市民から強い批判の声が上がっています。


外食チェーン各社のノミネート理由

 (株)ワタミフードサービス

 2008年6月に正社員だった森美菜さん(当時26歳)が、月141時間の残業を強いられ、わずか入社2カ月で精神疾患と過労自殺に追い込まれた。森美菜さんは連続7日間の深夜労働、午後3時から午前3時半の閉店まで12時間働かされた。昨年2月に労災認定された。

 遺族と支援する労働組合は、労働実態と原因の解明のために経営者ら責任ある立場の人との面談を同社に求め続けているが、同社は顧問弁護士との面談を除いて応じる姿勢を見せていない。逆に同社は昨年11月、遺族を相手取り同社が支払うべき損害賠償金の確定を求めて民事調停を申し立てた。

 同社が全社員に配布している「理念集」という冊子には、「365日24時間死ぬまで働け」と書かれているという(『週刊文春』2013年6月13日号)。

 王将フードサービス

 2013年2月、「餃子の王将」で働いている25歳の男性が、損害賠償を求める裁判を起こした。男性は長時間労働のためにうつ病を発症し、休職を余儀なくされている。その直前の6カ月の時間外労働は平均して月に約135時間だった。男性のうつ病は労災に認定されている。

 労働時間はコンピューターで管理され、1日10時間超の労働時間は入力できない仕組みになっており、組織的に残業代の不払いを行っていたことも明らかになっている。

 (株)サン・チャレンジ

 2011年11月、「ステーキのくいしんぼ」渋谷センター街店の店長だった男性(当時24歳)が、店舗が入居するビルの非常階段で首つり自殺した。

 男性の自殺を渋谷労基署は過労によるものと認定。男性は亡くなるまでの8カ月間、最少で月162時間、最多で227時間も残業しており、亡くなった当日まで連続90日間勤務していた。しかも名ばかりの「管理監督者」として、残業代もボーナスも支給されていなかった。

 また男性は、男性上司からひどい嫌がらせやいじめ、暴力を受けており、人格否定または罵倒する発言が執ようにあったほか、時には頭を殴られるなどの暴行も行われていた。

(新聞「農民」2013.8.26付)
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2013年8月

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