「農民」記事データベース20130812-1081-13

米価下落歯どめかからず

宮崎コシ新米概算金3000円下げ


国は需給と価格の安定に責任をもて

 自民党は「農業所得の倍増」を掲げて参議院選挙で大勝しました。しかし、新米の価格がとんでもない暴落状態で始まり、農家の所得は倍増どころか大幅な持ち出しの事態になろうとしています。東日本大震災以来、米価は不足感から高値が維持されてきましたが、4月ごろを境に業者間取引の価格が急落しています。標準的な価格帯の関東産コシヒカリは昨年秋に比べて1俵3000円以上も下落し、いまだに歯止めがかかりません。

 在庫を持つ業者は新米に手が出ず

 こうしたなか、出荷の始まった宮崎県のコシヒカリは概算金(JA系統の農家からの買入価格)の8月分は昨年比3000円下げの1万2000円、卸向け相対価格は4500円下げの1万6000円としました。しかし、業者間取引では8月価格は1万3700円程度(大阪着・税別)といわれ、続いて出荷される徳島県のコシヒカリの概算金が昨年比5500円安の1万2000円、キヌヒカリが1万1800円などとされています。

 手持ちの在庫を持つ業者は仕入れには消極的で、後に続く産地の値下げ競争が懸念され、生産者はもちろん、在庫を持つ業者にとっても事態は深刻です。

 背景には大震災を契機に生産・流通などの各段階で米の在庫を厚めに持つ傾向にありましたが、2年間で30%近い価格上昇に消費が追いつかず、中でも価格転嫁に苦しむ外食関係が1食あたりの量目を減らしたことなどが影響しています。またこの間、敬遠されていたSBS輸入米が10万トンも主食用に回った事情もあります。「米過剰・米価先安」の観測に誰もが在庫を減らしに動かざるを得ないのが現状です。

 見通しの狂いは9日分の消費量

 では、どれほど米が過剰なのでしょうか。7月26日の農水省の食糧部会で政府は、今年6月までの主食用米の年間需要量が見通しを20万トン下回る779万トンで、今年6月末在庫が見通しを20万上回る226万トンと公表しました。しかし、20万トンは国民の消費量の9日分程度に過ぎず、わずかな過不足で米価が乱高下する市場任せの米政策にこそ最大の問題があることは明らかです。

 同日の食糧部会で農協中央会専務の冨士重夫委員は「備蓄米の柔軟な運用で需給と価格の安定は政府の責任で取るべきだ」と主張しましたが、農水省は「需給調整のための備蓄運営はしない」とこれを否定しました。

 農家も米業者も政府が策定した需給見通しをもとに作付けや米の手当てをしています。見通しが狂い価格が大きく変動しようとするいま、政府の責任で需給と価格の安定をはかるのは当然です。

 備蓄米は25万トン買い入れの余地

 今年産の備蓄米買い入れのは種前契約は25万トンの目標に対して18万トンで終わり、7万トン不足しています。5年以内の米で100万トンとする棚上げ備蓄のルールからすれば、今年産の18万トンを加えても25万トンも買入れ余地はあります。

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 米穀安定供給機構には豊作過剰時のための農家の拠出金244億円が残っています。こうした基金を活用した民間レベルでの対策とも合わせて、政府の責任で需給と価格の安定対策を早急にとるべきです。

 現状を放置し、究極の市場任せとも言うべき「TPP参加」への道など絶対に許されません。

(農民連ふるさとネットワーク 横山昭三)

(新聞「農民」2013.8.12付)
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2013年8月

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