マレーシアTPP交渉会合に参加して
PARC事務局長内田聖子さんの報告
(大要)
すさまじい徹底した秘密主義
情報公開求めながら反対運動を
マレーシアのボルネオ島コタキナバルで7月15日から25日まで第18回TPP交渉会合が行われ、日本からNGOの代表として、アジア太平洋資料センター(PARC)の内田聖子事務局長が参加しました。31日に「TPPを考える国民会議」と「TPPを慎重に考える会」が主催して国会内で行った内田さんの報告の大要を紹介します。
多国籍企業が8割
第18回TPP交渉会合に参加しました。11カ国の交渉担当官約600人と企業、業界団体、NGOなどのステークホルダー約200人が一堂に集まりました。
今回の交渉会合の焦点は、知的財産、環境、政府調達・国有企業、ISDなどで、テーマがかなりしぼられています。農産物の関税も残っています。
ステークホルダーのなかでは、アメリカの多国籍大企業が目立ち、企業が8割を占め、NGOや労働組合などは2割と少数でした。会合会期中の1日だけ、ステークホルダー会議が開かれましたが、ブースの出展やプレゼンテーションがあり、企業にとっては「商談」の場、NGOには自分たちの要求を伝えるロビイングの場になっていました。
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報告するPARCの内田事務局長 |
主張したことさえ
日本は23日に正式参加しましたが、交渉官が総勢約100人、マスメディアも100人近くと、その数の多さは異様でした。TPP交渉に参加するにあたっては、各国と「秘密保持契約」を交わす必要があります。日本政府が24日に開いた、経団連や連合、JA、酪農・畜産団体などへの説明会は、「秘密保持契約」のために、「政府からは交渉に関する情報は話せない」「日本政府が交渉のなかで『何を言ったのか、主張したのか』さえも言うことができない」という内容で、各団体の代表はしばらくの間、あ然としていました。
このように、TPPの本質であるすさまじい秘密主義が徹底されています。国民への説明、情報公開よりも「多国籍企業の利益」が上位にくる構図そのものです。ラウンドごとに秘密性が高まっています。
関税撤廃に方針なし
TPPは、あらゆる品目を交渉のテーブルに載せ、例外なしにすべての関税をゼロにすることをめざしています。日本政府は、攻める分野として、自動車、鉄鋼、家電などの関税撤廃、海賊版の製造・流通の防止、外資参入の規制撤廃をあげています。しかし、これらがどれだけ実効性があるのか疑問です。また、守る分野として、「聖域5品目」を掲げていますが、この5品目を細かく分けると、実際には587品目(米だけでも58品目)にのぼります。これらすべてを関税撤廃の対象からはずすのは無理な話です。ではどこまでを守り、どこまで妥協していくのか、政府は何の方針もありません。
アメリカ主導の日程
25日に帰国しましたが、「日本郵政、アフラック社と提携」の新聞報道に接しました。すでに国内では、1000ほどの郵便局で売られているアフラック社の「がん保険」が、今後全国の郵便局2万カ所で販売されることになります。TPPに関連して、4月の日米事前協議を受けた「並行協議」が進んでいるのです。
交渉の方は、年内妥結をめざしてアメリカ主導のスケジュールが組まれ、政治的決着を迫る可能性があります。
交渉会場の外でも、市民グループの人々が抵抗運動を繰り広げていました。交渉会合参加国のNGO、市民グループと連携・協力し、「秘密主義」に風穴を開け、情報の共有を進めながら、反対運動を展開していこうと思います。同時に、日本国内での運動も大いに広げていきたいと考えています。
(新聞「農民」2013.8.12付)
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