「農民」記事データベース20130805-1080-09

コシヒカリを超える
高温障害に強い米を…

福井県農業試験場で進む育種研究

 日本学術会議が7月に東京都内で、「気候変動がもたらす農林業への影響とその対策を考える」をテーマにシンポジウムを開きました。このなかから、水稲の高温障害に強い品種の育成に取り組んでいる、福井県農業試験場(以下、福井農試)主任研究員の小林麻子さんの報告の一部を紹介します。


 近年、水稲が登熟する夏の高温が影響し、米粒が白く濁るなどの品質劣化が全国的に大きな問題となっています。とくに2010年に襲った猛暑では、北海道を除く各地で一等米比率が大幅に低下。現在では、多くの県や国の農業試験場で高温耐性(高温に強い)品種の育種が取り組まれています。

 福井農試では、2000年から高温耐性の研究が始まりました。福井農試といえば、コシヒカリを生み出した実績ある農業試験場です。2011年からは「ポストコシヒカリ開発部」を新設し、コシヒカリを超える高温耐性品種の開発が急がれています。

 福井農試では、「背白米(玄米の背側が白濁する)」が多発する「新潟早生」と、すでに高温障害に強いことがわかっていた「ハナエチゼン」という品種の遺伝子の塩基配列を解析し、背白を減らす遺伝子を見つけ出しました。このほかにも「越路早生」やインド型品種「カサラス」にも背白を減らす遺伝子が見つかっており、5年後には、これらの形質を引き継いだ「高温耐性があり、食味が良く、病気に強く、倒伏しない」品種の登録出願ができることを目指して、育種研究が進められています。

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乳白米(にゅうはくまい)と背白米(せじろまい)

 一方、米の品質低下には背白米のほかに米粒全体が白濁する「乳白米」もあります。しかし乳白米は背白米ほど発生メカニズムがはっきりしておらず、発生要因も複雑なため、遺伝解析が遅れています。高温耐性品種の育成には、品種の形質・性質の理解や、稲の生理メカニズムの解明など、育種研究者だけでは成しえない課題も多く、栽培や管理などの研究者との連携がこれまで以上に必要とされています。

(新聞「農民」2013.8.5付)
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2013年8月

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