「農民」記事データベース20130805-1080-07

ビア・カンペシーナ
第6回国際総会に参加して
(続報)

 インドネシア・ジャカルタで行われたビア・カンペシーナ第6回国際総会参加者の感想の続報です。


女性への暴力とたたかい続ける

沖津由子(青森)

 全国の農民連の仲間たちのカンパで、女性部からは4人の代表が参加できたことに、まず感謝します。また、世界の仲間たちに、届けようと折ってもらったメッセージ付き折り鶴は、「ピースシンボル、ディスプレー」など羽を大きく広げて見せて、プレゼントしました。大好評で、あちこちに飾られていました。

 女性総会の中で、多く語られていたのが、殺害、追放など女性に対する暴力は増大し、それは社会的排除から傷害までさまざまな方法で行われているということでした。

 多くの小農民が、土地を暴力的に追い立てられ生産手段を奪われている。そのなかで、小農女性はいっそう多くの影響を受けています。家父長制度が、女性たちをそうした状況においやり、家庭内あるいは社会における男性への服従は全ての女性が体験しています。

 これだけインターネットが発達しているのに、世界的な規模のネットワークを持つビア・カンペシーナのことを知らない人がいます。もっと多くの人々に伝え、理解してもらうことが急務だと思います。

 ビア・カンペシーナ第4回女性総会に参加できたことは私の人生においても重要でラッキーだったと実感しています。私も全国にあるさまざまな課題に向かってたたかい続けます。それが食糧主権と女性の権利尊重の一糸になることを信じて。

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国際総会の開会式典後、現地の人たちと記念撮影=9日


日本軍の蛮行を知り怒り心頭

松本慎一(埼玉)

 6月13日、ジャカルタ中心部の「インドネシア歴史博物館」を見学しました。これは広大な公園の中にあり地上165メートルの白いタワーがそびえ立つ真下にありました。

 地下1階の全面大理石造りの展示室は、インドネシアの成り立ちから現代までの歴史をジオラマと文字盤で一目でわかるようになっていました。

 インドネシアは16世紀からポルトガル、オランダなどによる列強の侵略と支配が繰り返され、多くの犠牲を払いながら独立・解放のたたかいがあったとのことです。

 しかし、それまでの侵略とはけた違いの犠牲者を出したのが日本による侵略でした。インドネシアの豊かな石油、石炭などの資源を求めて、1942年から45年の3年間にわたる支配のなかで、200万人犠牲者が出たということです。

 ボルネオ島出身の女性通訳による「多くの国民が犠牲になったが、日本軍により慰安婦、性奴隷にされた多くの女性がいる。その数はわかっていない」との話に一行は息をのむ思いでした。

 戦後68年が経過し、今でも日本との貿易は1〜2位、ODA(政府開発援助)を中心とした援助額は、日本が長い間第1位。日本の援助で造られたとみられる建物や道路造りのひどさを目前にして、「今まで、日本はいったい何をしてきたのか」という怒りが込みあげてきました。


原発事故の惨禍伝えていきたい

杵塚 歩(静岡)

 今回国際総会に参加するにあたって、私は2011年に起きた原発事故とその後の放射能汚染について訴えたいという思いがありました。

 日本の多くの農家が経験した農産物と農地の放射能汚染は、私たちがこれまで築き上げてきた生産と運動を一瞬にして覆しうること、原発は食糧主権とは決して共存できないことを世界中から集まる農家の仲間と共有し、二度と同じ惨禍を繰り返さないためにも、世界に存在する原発を止める運動に地域を守り安全な食料を供給する農家が連帯していこうと伝えるためです。

 残念ながら、世界では福島の現状や原発の危険性に対しての理解が十分であるとは言えません。それは彼らの関心がないからではなく、情報が限られているからです。大手メディアからの情報だけでなく現場で生きる農家の声をもっと大きくしていく必要があると常々感じています。

 福島から参加した佐々木賀代子さんや三浦草平さんの発言に会場の参加者は熱心に聞き入っていた姿が印象的です。総会の最後には日本からの提案で原発事故を二度と繰り返さないための国際的連帯と運動のための特別決議が採択されました。国内外での私たちの運動はこれからです。農民連の仲間が連帯してこれからも百姓の声を発していけたらと思います。共にがんばりましょう!


日本と似ている農業問題感じる

関根耕太郎(埼玉)

 現地に到着した翌日、最初に参加した会議が青年総会でしたが、マリから参加した青年が「農民が農民として暮らすことができず、生きるために移住する。その移住先で差別を受ける。農民から労働者になっている」と現状報告をしました。日本の過疎化の問題と少し似ているのかなと思い、少なからず共通している問題だと感じました。

 また、イタリアから「イタリアを始めヨーロッパで農家の平均年齢が上がっており、このままでは10年後には危機的状況になる」と発言がありました。この発言にも日本の農業問題と共通していると感じましたが、日本はヨーロッパに比べ、平均年齢も農業者減少数も食料自給率も更に危機的状況にあります。しかし日本はTPPに参加しようとしています。

 今必要なのは株式会社の参入などではなく、いかに若者が農業に魅力を感じるようにすることではないかと感じました。

 総会の開会式は、陽気な雰囲気に会場が包まれていました。来賓にインドネシアの農業大臣が参加していたのには驚きました。

 私にとって初めての海外でしたが、全体を通して、文化の違い、言葉の違いなどさまざまなことがあり、日本では味わえないことを体験することができました。今後さまざまなことに生かしていきたいと思います。


強烈に感じた若い人の勢い

湯本真理子(長野)

 今回、国際総会に参加させていただいて、新しい視点や多くの体験を得られました。期間中いろんな国の参加者と話しましたが、いっそう私は日本でのことを考えました。彼らから学んだのは、今ある問題に立ち向かうためにもっと組織として強くなること、共通の認識を持って連帯を強化していく必要性です。

 青年総会ではさまざまな事例が報告され、意見が交わされて、意識の共有がなされました。とても挙げきれない議題の数々で私の回路はショート寸前。強烈に感じたことは、参加各国の若者の勢いです。全体総会の中でも多くの発言があり、合間でのデモンストレーションが青年の主導で行われたりしました。

 ミスティカという儀式のようなものも毎回会議の前にありました。それは形式の決まったものではなく、多国籍企業に立ち向かう農民の姿を伝えるものだったり、会場内の参加者に種や水を与えて農業の本来の姿を現すものだったり。周りに問題を伝えるアプローチの方法は、若いから思いつくことやできることがある。まず関心を持ってもらう方法に知恵をしぼらなければと思いました。

 農業だけに限りませんが、日本でも青年がもっと発言力を持って、重要なポストに位置づけられるようにならなければいけない。私も今まで以上に学習して行動していこうと思っています。

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ミスティカで寸劇を披露するアフリカの代表=11日


農業女性への差別など知って

森村理香(オブザーバー)

 私の尊敬する活動家にラージ・パテル氏(アメリカ在住のジャーナリスト)がいますが、彼の講演会では必ず「食糧主権」が語られます。国際総会が開催されることをビア・カンペシーナのホームページ上で知ったときには、この「食糧主権」という素晴らしい言葉を生み出した人々に何としても会いたいと思い、個人的にオブザーバーという立場で参加させていただきました。

 女性部の会議に参加したときに農業における女性の差別や暴力が問題にあがりました。それはお金を借りるときや地区の会議に夫の代理で参加するときなどさまざまな場面で根強く残っているのだと教えられました。また農村部で若い女性が農業を始め、続けていくことは精神的にさまざまな苦痛を強いられるということも教えられました。

 スカブミ村の視察へ向かうバスで一緒になったグアテマラの女性と話したことが印象に残っています。2004年から農民の土地が収奪され、家や田畑が焼き払われ、次の収穫までの食料であったトウモロコシも失ったという話を聞きました。

 多国籍企業の人間や政府は世界中をいとも簡単に移動して思うままに世界を分裂へと引き裂いていく。けれど私たちには共感と連帯がある。お互い国へ戻ったらこの連帯感を自分たちの国の人々に広めていこうと固い約束を交わしました。

(新聞「農民」2013.8.5付)
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2013年8月

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