TPP交渉への参加に抗議し、
即時、撤退を要求する
2013年7月23日
農民運動全国連合会会長 白石 淳一
一、政府は7月23日、TPP交渉への参加を強行した。地方議会の8割が反対や懸念する決議を上げ、各界各層の広範な団体が強い反対の意思を表明するなど、国論を二分する状況下での交渉参加は絶対に容認できない。
TPP交渉への参加は昨年暮れの総選挙での公約違反であり、今回の参院選挙でも多くの自民党候補がTPP反対を表明し、「総合政策集」では国益が守れない場合は交渉から撤退すると主張して選挙をたたかった。
国の命運を左右し、国民生活に重大な影響をもたらすTPPについて、このような欺まんに満ちたやり方で強行することはもってのほかである。交渉からの即時、撤退を要求する。
一、安倍首相は交渉を通して“国益は守れる”として交渉参加を強行したが、国益の中身については明らかにしていない。そもそも2月の日米首脳会談や日米の事前協議において、すべての関税、非関税障壁の撤廃を原則とする「TPPの輪郭」を確認している。
米、小麦、乳製品などの農産品5品目を重要品目とし、関税撤廃の対象から除外できるとしているが、その根拠も保障もない。現に西川公也自民党TPP対策委員長は、参院選が終わると5品目が守れない可能性を認め、米通商当局者も「5品目すべてどころか、ごく一部も認められるかどうかわからない」と発言している。
非関税分野についても、食の安全、環境保全、公的医療、雇用、地場産業の育成など、国民生活全般にかかわるルールが多国籍企業の利益最優先にゆがめられ、格差と貧困をさらに押し広げ、国民の生存権さえ脅かされかねない。
進出先国の政策によって損害を受けたとして投資家や企業が国際仲裁機関に政府を提訴することができる「ISD条項」は国家主権を脅かすものである。
一、交渉に参加する日本に対して、他の交渉参加国は、交渉を遅らせることがあってはならないときびしくクギを刺し、すでに合意している事項についての議論の蒸し返しを拒否している。後発で交渉に参加する日本には対等な交渉権がなく、交渉できる余地が限りなく狭いことを意味している。
また、日本政府は、守秘義務協定に調印して交渉に参加した。政府交渉官は交渉後の記者会見で守秘協定を理由に交渉内容を明らかにすることを拒否した。国民は交渉内容や経過を知ることができないまま、結果だけを押し付けられることは明らかである。
一、異常な協定であるTPPによってもたらされる損害はあまりにも大きい。国益が守れないTPP交渉は撤退する以外にない。
農民連は、2010年10月に民主党政権下で菅元首相が「TPPへの参加の検討」を打ち出して以来、TPP参加反対の運動の先頭に立ってきた。当初の「TPPは第1次産業の問題」「権益を侵される一部業界団体が反対している」などの分断攻撃を跳ね返し、「TPP反対」の一致点での共同の拡大に努力してきた。こうした共同の運動組織が全国に多数作られ、日々、地域ぐるみの運動が高揚している。
たたかいはこれからである。国会批准の阻止も視野に入れ、全国民規模の運動でTPP参加を絶対に阻止するために全力をあげるものである。
(新聞「農民」2013.8.5付)
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