分析センターだより
ミツバチの力を借りて
放射能汚染を調査中
去年から農民連食品分析センターでは放射能汚染の調査のため、大東文化大学の先生と共同で福島の高汚染地域に入っています。その調査の一つに昆虫の力を借りているものがあります。
それはミツバチです。働きバチは巣の周囲2〜3キロメートルの距離を飛び回り、餌になる花粉や花のみつを集めます。その花粉やみつをミツバチからお借りして調べることで周囲の放射能汚染を調べるのです。
今月からは東京の汚染調査に分析センターの屋上にもニホンミツバチがやってきました。
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分析センターの新しい“住人”のミツバチ |
日本の在来種である彼女ら(驚くことに働きバチはすべて女性!)は他のミツバチと違い、怒らせたりしなければめったに人を刺しません。しかし能ある鷹(たか)は爪(つめ)を隠す。天敵であるスズメバチが来たときは集団で取り囲んで蒸し焼きにして退けたりもします。
基本的にはこちらからご飯や飲み水を用意せずとも平気なので、掃除や虫害などに対する対策は必要なものの、毎日みていないといけないわけではありません。動物とともにあるけれど、ペットとの信頼関係などとはまた違う、この距離感も魅力の一つです。
このかわいい分析センター職員とまたがんばっていこうと思います。
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私は分析センターに来てからと来る以前では食の安全とは何か、分析とは何かという認識がまるで違うものになりました。
放射能の分析では依頼品以外にも全国の食品や土壌などを検査しているのですが、濃度は低いものの今回の原発事故由来のものとは違う放射性同位体、セシウムが検出されていると思われるものが見つかるときがあります。
セシウムの放射性同位体は自然界には存在せず、原子力発電を行う際などに生まれるいわば人工の放射性同位体です。
昔からの測定データによって事故以前の人工放射能汚染があるというデータはあるのですが、私は恥ずかしいことに今回の原発以前の汚染はないという認識でした。
本当にまだまだ勉強不足なのですが、検査をしてデータになることで多くの人に安全や問題を伝えることができ、そしてそれを伝えていくのが分析センターでできることの大事な一つだと思うきっかけになりました。
分析センターで働くということはこのデータの責任とともに、食について考える恵まれた場所だと思います。ここで得ていくものを自分の中だけで留めずに安全な食とはなにか? を考えるきっかけづくりを外に発信していこうと思います。
(小田川)
(新聞「農民」2013.7.29付)
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