ジャカルタからの呼びかけ
ビア・カンペシーナ第6回国際総会の政治宣言
(全文)
ビア・カンペシーナ第6回国際総会最終日の6月12日に採択された政治宣言「ジャカルタからの呼びかけ」全文を2回に分けて掲載します。
われわれビア・カンペシーナは、農村と都市の組織、社会運動に対して、食糧主権と公正を基盤とする新しい社会への移行とその構築を呼びかける。われわれはここに集い、友人やリーダーたち、その勇気とたたかいへの献身がわれわれを奮い立たせてくれるすべての人々の気概から力を得た。国際的な小農民運動であるビア・カンペシーナには、88カ国183組織の2億人を超える小農民、小規模生産者、土地のない人々、女性、青年、先住民、移民、農場・食品労働者が結集している。われわれは、自らの最初の20年間のたたかいを祝うため、世界の小農民の過半数が生活するここアジアに集まった。
われわれは1993年、ベルギー・モンスに結集し、1996年、メキシコ・トラスカラで食糧主権という革新的ビジョンを提示した。新自由主義貿易アジェンダに抵抗し、それへの対案を構築する取り組みにおける中心的な社会的主体に小農民と家族農民(の男女)を改めて位置付けることに成功した。われわれは、土地に根差した者として、別個の農業モデルの構築においてだけでなく、公平かつ多様、平等な世界を築く上でも不可欠な主体である。われわれは、人類に食料を提供し、自然を保護する。地球の保全について、将来の世代がわれわれに依拠している。
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(後列左から)三浦さん、藤嶋さん、関根さん、齋藤さん、曽根さん、岡崎さん、森村理香さん、松本さん。(前列左から)杵塚さん、高嶋さん、高橋さん、大木さん |
今日、かつてなくもう一つの世界が必要になっている。乱開発や土地からの人々の追放、天然資源の占有による世界の破壊が、現在の気候危機、深刻な不平等につながり、人類や生命そのものを危機にさらしている。ビア・カンペシーナは、この企業主導の破壊に対して、断固とした「ノー」を唱える。
われわれは、連帯、協力、補完性にもとづく人類と自然の間の新しい関係を構築しつつある。たたかいの中心には、生命の倫理がある。ビア・カンペシーナは、世界各地の身近なたたかいすべてに光を当て、これらが、国際的な視点で理解されるようにし、世界の人々の食糧主権、社会変革、自決権のためのグローバルな運動に統合させる。
われわれは、自らの組織、連帯・友好組織、よりよい未来を目指すすべての人々が、「グリーン経済」を拒否し、食糧主権を構築するよう呼びかける。
前進の道今こそ食糧主権を――われわれの世界の変革
食糧主権は、社会的公正のためのたたかいの中核であり、農村から都市まで多くの部門を結集させる。食糧主権は、すべての人、民族、国家が、食糧・農業にかかわる制度と政策をコントロールするための基本的な権利であり、適切な、手頃な価格の、栄養価の高い、文化的に適切な食料をあらゆる人々に保証する。これには、身近なレベルと国際的なレベルの両方で、生産、加工、流通のあり方を決定し、コントロールする権利が伴う。
過去20年間を通じて、われわれの食糧主権ビジョンは、社会変革にかかわる多数の活動家に勇気を与えてきた。われわれの世界ビジョンには、農業革命、社会・経済及び政治的変革が含まれる。食糧主権は、地元での持続可能な生産、人権の尊重、公正な食料・農産物価格、各国間の公正な貿易、民営化からの共有財産の保護を極めて重視している。
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会議場外で記念撮影する国際総会参加者=12日 |
今日、われわれは制度全体にかかわる歴史的危機に直面している。食料、労働、エネルギー、気候、生態系、倫理、社会、政治、制度的システムが世界の多くの場所で崩壊しつつある。化石燃料枯渇によるエネルギー危機への対処が、地球上の生命への最大の脅威の一つである原子力からアグロ燃料までの誤った解決策によってなされている。
われわれは、工業型農業・土地・自然への金融・投機資本の攻勢的な参入によって現在特徴付けられる資本主義を拒否する。これが、大規模な土地収奪、土地からの人々の野蛮な追い出し、地域社会・文化・生態系の破壊を引き起こしている。また、多数の経済移民、気候難民、失業者を生み出し、現在の不平等を悪化させている。
多国籍企業は、政府や国際機関と共謀して、グリーン経済を口実に、遺伝子組み換え単一栽培、巨大鉱業、ダム、破砕プロジェクト、大規模植林・バイオ燃料プランテーション、海・川・湖・森林の民営化を押し付けている。食糧主権は、共有財産に対する支配権を、民衆の手に取り戻す。
アグロエコロジーは、現在と未来の選択肢
小農民の農業、小規模漁業、牧畜はわれわれの食料の大半を生み出している。小農のアグロエコロジーには、文化や地理に根差した極めて多様な技術や実践が含まれる。さらに、有毒物への依存を取り除き、閉所での家畜生産を拒否し、持続可能なエネルギーを用い、健康な食料を保証する。また、尊厳を高め、伝統的な知識を敬い、土地の健全性と本来の姿を取り戻す。将来の食料生産は、より回復力のある多様な方法で食料を生産する人々に多くを依拠しなければならない。
アグロエコロジーは、生物多様性を擁護し、地球を冷やし、土壌を保全する。われわれの農業モデルは全人類に食料を供給できるだけでなく、森林や河川と調和した地元生産を通じて気候危機の進展を阻止するとともに、多様性を増し、有機物を自然の循環に戻す方策でもある。
社会・気候正義と連帯
地理的・文化的多様性を基盤としつつ、食糧主権運動はますます拡大し、社会正義と平等を内部に取り込むことで、いっそう強化される。われわれは、競争に対して連帯を実践し、家父長制、人種差別、植民地主義、帝国主義を拒否し、子ども、女性、男性、自然を搾取することとは無縁の、参加型民主主義社会を目指してたたかう。
われわれは直ちに気候正義を実現するよう要求する。最も被害を受けているのは、気候・環境における混とん状況を生み出している者たちではない。グリーン経済という誤った解決策を通じた資本主義的成長の主導者が状況を悪化させている。このため、生態系と気候における負債に対処しなければならない。また、炭素市場メカニズム、地球工学、REDD〔森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減〕、アグロ燃料の即時停止を求める。
われわれは、とりわけ、製品の不買運動を行い、乱開発への協力を拒否することで、多国籍企業と恒常的にたたかい続ける。自由貿易・投資協定は、多数の人々が極めて被害を受けやすい、不公正な状況を生み出した。これらの協定の実施によって、暴力、さらなる軍事化、抵抗運動の非合法化がもたらされている。もう1つの悲劇的結果は、人権侵害や差別がまん延する低賃金・不安定・安全でない雇用への人々の大規模な移動である。ビア・カンペシーナは、国連人権理事会の議題に小農民の権利を載せることに成功し、各国政府に対して、この権利を実現するよう求めている。人権のためのわれわれのたたかいは、国際連帯〔活動〕の中心にあり、その中には農場・食品移民労働者の権利や社会的保護も含まれる。
女性への暴力と差別のない世界
われわれのたたかいは、正義・平等・平和を基盤とする社会の構築を目指している。われわれは、すべての女性の権利を尊重するよう要求する。われわれは、資本主義、家父長制、排外主義、同性愛嫌悪、人種や民族にもとづく差別を拒否し、女性と男性の完全な平等の実現に向けて努力していくことを再確認する。すなわち、農村及び都市における、家庭内の、あるいは社会的な、あるいは制度的な、女性に対するあらゆる形式の暴力を停止することを求める。女性への暴力に反対するキャンペーンはわれわれのたたかいの中心にある。
(次号につづく)
(新聞「農民」2013.7.29付)
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