関税撤廃による生産額
農林水・関連11・1兆円減
TPP
生産・所得への影響
大学教員の会が試算
(第3弾)
畑作も酪農もきびしく
大規模農家ほど打撃大
「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」は7月17日、国会内で記者会見を行い、日本がTPP交渉に参加して輸入関税が撤廃された場合の生産、所得などへの影響についての試算を発表しました。農林水産物の関税を撤廃した場合、関連産業を含めると11・7兆円の生産額の減少になります。
|
会見する(右から)醍醐聰・東大名誉教授、土居英二・静岡大名誉教授、三好ゆう・桜美林大学専任講師 |
都市部にも影響
11・7兆円の内訳は、当該県内での農林水産物の生産減少による影響分が6・4兆円、他県の生産減少による影響分が5・3兆円となります。関連産業を含めた打撃がもっとも大きいのは北海道で1・4兆円の生産が失われます。
また、農家や企業、従業員の家計の所得が減少し、関税撤廃で安い農産物が流通し、消費者の家計負担が減少する分を差し引いても所得は総額で1・8兆円減少します。
同時に「大学教員の会」は、酪農や畑作の個別経営への影響試算の結果を発表しました。畑作については北海道の場合、関税の撤廃により、主力のイモ類、テンサイがほぼ壊滅すると予想されることから、5ヘクタール以上の規模の農家の各種補助金を除いた農業純所得の減少は総額で753億円となります。
輪作からみても
さらに畑作作物を品目別にではなく輪作体系という視点からとらえると、豆類もその他の輪作作物の壊滅に伴って地力の低下が生じると見込まれ、作物収入と農業純所得の減少はさらに拡大すると予想されます。
北海道を除く全国でも、関税撤廃により、農業純所得の段階で軒並み大幅な減少がもたらされ、輪作体系も全国でみられることから都府県でも作物収入と農業純所得の減少はさらに多くなると予想されます。
北海道の酪農の場合、関税の撤廃により、生乳生産が甚大な打撃を蒙ると予想され、農業純所得は、すべての規模の農家でマイナスとなります。
規模拡大策では
このように関税撤廃の打撃が大規模農家ほど大きいのは、これらの農家が生乳に傾斜し、他の畜産収入や作物収入など酪農以外の収入源がほとんどないこと、固定資産装備率が大きく、酪農収入が激減しても圧縮しにくい固定費の比重が高いことなどが主な理由です。
大学教員の会は、「TPP参加に伴ってわが国の酪農が蒙る甚大な打撃を規模の集積・拡大で乗り切ろうとする議論の信頼性は極めて乏しい」と指摘しています。
(新聞「農民」2013.7.29付)
|