岩手 なたねシリーズ
あぶらを搾る
(5)
「圧搾法」と「抽出法」の違い
以前、大量調理の仕事をしていたとき、揚げ物の担当の調理師が、決まって気持ちが悪くなることに不審を抱き、調べたところ、市場に広く出回っている食油を高温に熱したとき、発がん性の物質を含んだ煙を出すこと、そしてそれは、搾油方法に原因があること等が判明し、食油についてもっと知らなければと思ったのです。
搾油方法は大別して、ナタネに単純に圧力をかけて搾る圧搾法と、石油系の溶出液で溶かして抽出する抽出法からなります。
私たちの工房にように、薪で焙煎(ばいせん)をし、昔ながらの搾り方の圧搾法の食油は、ナタネに含まれる優れた脂肪酸や、抗酸化成分のビタミンE等の栄養素を損ねることなく純粋に保ったままの製造方法です。
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健康にも環境にもやさしい圧搾法は「良い油」をつくります |
これに対し抽出法は、石油系溶剤のノルマルヘキサンで溶かした後も、不要物の除去、脱色、脱臭などの作業に加えて精製においても加熱安定剤、色素、香など、多くの食品添加物を使用して作ります。そのため高温にすると発がん性の煙を出すなどの不安がぬぐいきれない食油なのです。
また、搾りかすや使用後の廃油が環境にも土にも水にも優しく戻る圧搾法の食油に対し、抽出法の油は河川の汚染を進める心配もあるのです。
どんどん需要が増える食油、優れた栄養成分に加え、製造工程においても、健康にも環境にもやさしい「良い油」を選んで食べることの大切さを改めて考えたいものです。
(つづく)
(工房地あぶら 伊東庚子)
(新聞「農民」2013.7.8付)
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