「農民」記事データベース20130701-1075-09

岩手 なたねシリーズ

あぶらを搾る
(4)


地域ぐるみで6次産業化図る

 最近よく耳にする農業の「6次産業化」。1次産業から3次産業まで一貫して担い、所得の向上を図ろうとするものです。たしかに個の収益を上げるには有効な手段ではあります。

 ただ私たちのような工場が原料生産を行い、飲食事業を行うことが、そこで暮らす人たちにどれだけの恩恵をもたらすことができるのでしょうか。当社で原料生産すれば収益は会社内では潤うかもしれませんが農家さんとのかかわりは薄れ、孤立してしまうのではないか。やはり農家さんが原料を生産し、それを私たちが加工し、飲食店さんで使用してもらう――そういった循環がなくては地元で事業を行う意味がどこにあるのでしょうか。収益をあげなくてはという現実の問題と、企業が地元に果たすべき責務とは何か、そんな思いを常に抱えています。

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「工房地あぶら」のメンバーのみなさん。中央が小野寺さん。右端が伊東庚子さん

 幸いにも自分でナタネの栽培に乗り出さなくとも、各地から搾油の依頼があります。本当にうれしい限りです。各地で栽培されたナタネが一度当社に集まりますが、また栽培された地に油とかすになって戻っていきます。そしてその地で消費されるのです。

 ここ岩手県一関市でも生産、加工、消費という循環ができつつあります。工房の隣には昨年、なたね油と地元産食材を使用したレストランやお惣菜、お菓子の製造施設ができました。仕事が一つできたのです。小さな出来事ではありますが、うれしい出来事でした。

 地元生産農家の思いにより立ち上がったこの工場は、地元の方々と一緒になって生産、加工、販売をすすめていく地域の核となり、地域ぐるみで6次産業化を図っていくことが当社に課せられた使命なのではないかと考えるようになりました。

(つづく)
(工房地あぶら 小野寺伸吾)

(新聞「農民」2013.7.1付)
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2013年7月

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