ドイツの林業を学ぶ
(下)
農民連ふるさとネットワーク 渡辺満広
“森の話は森で聞く”を実感
市有地の伐採現場を見学
福島からの参加者ら7人を乗せたバンは、アウトバーン(高速道路)を南下して一路ドイツ南西地方のシュヴァルツヴァルト(黒い森)へ。
たおやかな山谷にある小規模(15人程度)な製材工場を見学。地元の工務店の急な注文にも応えられる小回りの良さが売りです。私たちの訪問の翌日は、工場を休みにして朝5時にみんなで国際木材見本市に出かけたそうです。地域を支える熱意と気概を感じました。
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木クズが舞う製板の作業現場 |
フライブルク市有林では、高さ約20メートルのモミを切り倒す作業を見学。(1)倒す方向を決める(2)根張りを切る(3)追い口、受け口を入れる(4)大声で2度周りに注意を呼びかける(5)倒す――説明しながら実演した作業員は20歳の青年でした。チェーンソーをまるでナイフのように扱い、淡々と作業をこなしていた50歳代の同僚は「農業で食っていけなかったから転職した」と語っていました。
森の持続利用を訴える森林官
森林官のミヒャエル・ランゲさんに森の中でいろいろと教えてもらいました。森林官は伐採計画、林道敷設保守、動植物の保護から木材の価格交渉に至るまで林業全般に関わっています。ドイツの森林政策の中では要となっています。とくに林の所有者とのコミュニケーションはとても重要なので私たちの案内中でも、出会うたびに道端で立ち話していました。
森林官の中でも、天然混合林の重要性を訴えるランゲさんは、「人間が森にできる事は、光の調整と観察だけだ」と言います。枝ぶりや幹、地形などをみて木の生命力を判断し、ライバルとなる木を伐採していきます。そうして広がった樹間に光を入れ、次世代の幼木を育てます。
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作業服のデザインは、若者を意識してつくられている |
このような天然更新では、樹種豊かな混合林になるので害虫や災害にも強くなりますが、自然発芽がベースになるので、若芽を食べるシカやイノシシなどの適正な狩猟は欠かせません。単一種で植林した暗い林と比べると、風が吹き抜けて明るくて気持ちがさわやかになりました。温泉もない森にドイツ人が入っていく訳がわかりました。
森をきちんと管理して利用すれば、経済的にも社会的にも森の多面的機能を生かせることを学びました。
福島と重なるドイツの森林
ドイツの森を歩いていると、福島の風景が重なってきます。反転耕うんされた草地、見放された山林。「なんとかしなければならない」と、参加したみながそう思ったはずです。
(おわり)
(新聞「農民」2013.6.17付)
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